元アニメ背景画家の、高円寺飲み歩き描き歩き vol.2 【ダイニングキッチン Saji、なごみ酒肴 まる、ビアエンジン】

ビアエンジン外観
背景画・文章:後藤太郎
高円寺

こんにちは、元アニメ背景画家の後藤太郎です。


ぼくはこれまで、アニメの背景画家(キャラクター以外の町や家、空や山などを描く)を20年弱していました。

最近では「ポケットモンスター 雪ほどきし二藍」「王様ランキング」「機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島」「ジョゼと虎と魚たち(アニメ)」といった作品に、背景担当として参加しました。

現在はその仕事から離れて高円寺から地元・新潟へ拠点をうつし、絵の学びなおしをして何を描こうか模索中です。
その模様を、Twitterに投稿しています。

背景画の仕事をしていた時は高円寺に住んでいて、飲み歩くのが好きでした。
そして、高円寺のお店の外観や『お酒を飲みながら店内をスケッチブックに描く』ことを続けていました。

この企画では、高円寺飲食店のイラストと共に、お店の思い出や私なりの街の楽しみ方などご紹介したいと思います。

新高円寺洋食屋「ダイニングキッチンSaji」は東京で最初に行った記念のお店

東京生活を始めて最初に行ったお店が、新高円寺のダイニングキッチンSajiでした。

この絵は、高円寺の飲食店を描いた最初のものです。

地元新潟に住んでいた時通っていたキッチンバルのマスターが「東京に行くなら、先輩のお店に行ってみてよ」と紹介してもらった、縁があるお店です。

初めて伺った時はコロナ禍。

人が多いところには行きたくなかったので、個人店はとてもありがたい存在でした。

Sajiは、70代くらいのシェフと奥さんの2人で営業されています。

奥さんのご出身は富山で長く働かれていたことがあり、新鮮な富山食材を送ってもらっています。
ホタルイカや富山牛など「富山推しのお店」です。

シェフの同級生や、60~70代くらいの常連さんが多いです。

「年齢的に、和食じゃないと皆ランチに来てくれないんだよ」と用意している『ランチ限定5食・幕の内弁当風』がお薦め。
洋食屋ですが、麻婆豆腐も美味しいです。なんか不思議な味わいだな?と思ってシェフに聞いてみると、仕上げにラー油でなくごま油をかけているのだそうです。フレッシュな美味しさです。
揚げ物についているサラダなども新鮮です。

派手な美味しさでなく、味わい深く染みる感じが魅力。

お店で話が盛り上がり、ラストオーダー後にお店の人も一緒に席を囲むなんてこともありました。


東京生活を始めて最初に行ったお店が、Sajiで本当に良かったと思います。


新高円寺居酒屋「なごみ酒肴 まる」で店員さんに沢山話を聞いてもらった

続いてよくお世話になったお店が、新高円寺の居酒屋まるです。

Sajiのシェフに「しめ鯖なら、まるが旨いよ。まぁ、あそこはなんでも旨いけどね」と紹介してもらいました。

Sajiと共通のお客さんが多いお店。


まるは、ほんと近所に住んでいるか、紹介してもらわない限り入ることがない様な裏路地にあります。

新高円寺に住んでいる方も、お店の場所を知らない方多いんじゃないでしょうか。


50歳くらいのご夫婦がされているお店です。

口数少ないご主人がメインの和食担当で、お酒とおしゃべり好きな奥さんがホールとパスタなどの洋食を担当されています。

奥さんの人柄あってか、女性の一人客もよく来られます。
男性は40代、女性は30代前半~半ばくらいの方がカウンター席に多かった印象です。

ふきのとうの天ぷら、美味しかったなぁ。
刺身やサラダも半分の量に調節してくれたりするので、色々食べたくなります。
てんぷらやお刺身が食べたくなったら、ここに来ては日本酒も飲んでました。

会社以外に知り合いがいない時期だったので、私がやりたいことなど色々話を聞いてもらっていました。

むしろ、話を聞いてもらう為に通っていたような頃も。

高円寺生活で、とても親密にお世話になったお店です。

高円寺ビアバー「Beer Engine ビアエンジン」ではじめてお酒を飲みながら店内を描く

週末「Saji」と「まる」に通っているうちに、コロナ禍の時短営業が終わってきたので、少しづつお店を開拓し始めました。

お店の人と話したい気持ちが強くなってきて、個人経営でお店の人とカウンターで適度に話せるお店を探しました。


歩いていると、店前に酒樽があるお店を発見。

店名は、Beer Engine。
リアルエールの専門店です。


この時期から好きなお店のカウンターで、お酒を飲みながら内装の絵を描かせてもらう様になりました。


勿論、絵を描きたいと思っても、店内で絵具を使うにはお店とお客さんへの配慮が必要です。


なので、許可取りするために、いろいろ工夫を試みる様になりました。


具体的には、お酒を飲みながら店主とお話できる時に「僕、絵の勉強をしているんです」と書き溜めたスケッチブックを見て頂き「次来たとき、店内などを飲みながら描かせてくださいませんか?」と自然な流れで話をするようにしました。

そして「店内で簡易的な絵の具を使っていいか」や「混む時間帯などを事前に確認」しました。

お店の人に許可を得ることは、慣れていないと心理的ハードルがとても高いですが、この方法で色んなお店の絵を描きやすくなりました。


飲食店でスケッチをする時は、衛生面や他のお客さんのご迷惑にならないかなど考えます。

店内ではできるだけ消しゴムを使わず、席が埋まり始めたら辞めます。


料理の絵を描くときは、基本的に時間が経っても味が変わりにくそうなものを選びます。
もし温かい料理を描くときは、お店の人に聞いてから描く様にしています。
せっかくの料理を冷めるまで食べないのは失礼ですし、早く食べたいですから。

どんなに配慮したつもりでも、お店の人に聞いてみなければ分からないことも多いので、描き始める前に、ある程度確認しています。


まず、このお店で最初に描こうと思ったのが「ビールのハンドポンプレバー」です。

ビアエンジンはリアルエール(イギリスの伝統的な製法で造られるビール)の専門店。

ビールの中に炭酸ガス入れず納品してもらうこともあるそうで、やはりこのお店の一番の特徴は、ずらっと並んだハンドポンプレバーだと思いました。

黒い木製レバーの持ち手の存在感を表現したくて、いつもより太めのペンで荒っぽく塗った部分が気に入ってます。


次にこのお店の特徴をよく表しているものは「カウンターにたくさん並ぶ玩具」です。

けん玉、ルービックキューブ、謎の棒、地図帳などがあります。

一人でもお客さん全体でも楽しめるグッズの数々は、素晴らしいコミュニケーション手段・もてなしで、このお店の在り方そのもののように感じます。


黒いけん玉はビアエンジンのロゴ入り。
珍しがって遊び始めたお客さんに店員さんがレクチャーしたり、誰かがけん玉をすると皆で盛り上がったりしました。
そのロゴ入りけん玉が気に入ったお客さんは、購入する方も多かったです。
外国人旅行客も多いので、結構売れてるんじゃないかな?

店主はけん玉だけでなく、ルービックキューブもお上手。
ストップウォッチを使ってタイムトライアルで大いに盛り上がります。

そして、けん玉の隣にある「謎の棒」。
あまりにもカウンターで違和感なく置いてあるので、思わず「お箸?」と間違って使ってしまいそうになったのですが、なんと「編み棒」でした。

「ここで編み物するお客さんがいるんだよ」と言う店主に、そんなことある?と思っていると、タイムリーに「思い付いたことを試したいから編みにきた」というお客さんが現れました。

色々な人がいるんですね。

そして「カウンターで編み物する人がいるんだったら、絵を描いてる人がいてもいいですよね?」みたいに話をすると「もちろん!」と返事を頂きました。

「邪魔なものどかす?」「絵具用の水はどうする?」と、そんなことまでしてくれるのか!と思うくらい気を使って頂きました。


地図帳は、初めて来たお客さんに「どこから来たの?」と聞いては地図で調べて話題にしたり、常連客同士で「今度どこ行く?」と遠征の予定を立てたりと、思った以上に使われています。

僕も最初にビアエンジンに入った時に出身地を聞かれましたが、地図を見ながらだと思った以上に話題が出てくるなぁと驚いたのを覚えています。
他のお客さんにも話を振ったりして頂いて、この店ならではの素晴らしい巻き込み方なんだろうなと思いました。

お客さんは、近所に住んでる方がほとんどなのですが、ビール好きが大阪から飲みに来たり、旅行ついでに来たりと、遠方から足を運ぶ方も多かったです。

それくらい、ビール好きな方に有名なお店です。


今まで飲食店で絵を描く事は不可能だと思っていたことが一転し「これが自分らしい、人との関わり方かもしれない」と思い始めるキッカケを頂いたお店です。


こうして、お酒を飲みながらスケッチする「飲み歩き描き歩き」が本格的にスタートしました。



次回も引き続き、高円寺飲食店の「飲み歩き、描き歩き」をご紹介します。

読んで頂き、ありがとうございました。

プロフィール

後藤太郎

後藤太郎

元アニメ背景画家。
1977年生まれ、新潟県出身。
2005年からアニメ背景制作を始める。

最近の背景参加作品
天国大魔境、ポケットモンスター 雪ほどきし二藍、王様ランキング、機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島、ジョゼと虎と魚たち(アニメ)など

酒・食・観光地を描き歩きながら生活するすべを模索中。
2023年の目標はブログで生活費を稼ぐこと。

Twitter

note