阿佐ヶ谷の名曲喫茶「ヴィオロン」は、クラシック音楽を聴きながらコーヒーを嗜むお店。
名曲喫茶は今では非常に少なくなってしまったけれど、中央線沿線には老舗店として数店舗残っていて、ヴィオロンはそのうちの一つだ。
創業は1980年頃。
阿佐ヶ谷はジャズの街でもあるけれど、阿佐ヶ谷の音楽の歴史を作ってきたお店といっても過言ではないだろう。
店内にある、2mほどの大きいスピーカーから流れる美しいクラシックに耳を傾け、コーヒーを飲んで目を閉じると、違う世界に誘われる感覚に陥る。
まるで映像のない映画を見ている様な感覚。
今回はそんなお店で、コーヒーと自家製ケーキを頂いてきた。
目次
阿佐ヶ谷の名曲喫茶「ヴィオロン」外観

お店は、阿佐ヶ谷駅北口から3分ほど歩いた、スターロード商店街の端っこに位置する。
ヴィオロンは、イタリア語でヴァイオリンの意味。
お店の斜め前には私がよく利用するコーヒー店「Bnei Coffee」がある。
Bneiさんがお客さんでいっぱいの時はヴィオロンさんで時間を潰してもよいし、逆も然りだ。

メニューは、ドリンク5種類と、自家製ケーキのみ。
営業時間の12時~17時は、大きな音響からクラシックレコードがかかる「レコードタイム」で、晩の18時~20時は色んな音楽ジャンルの生演奏やミニ演劇などがある「ライブタイム」になる。
今回はお昼の、レコードタイムで来店。
阿佐ヶ谷の名曲喫茶「ヴィオロン」店内

店内は、名曲喫茶らしい厳かなイメージ。
スペースはそんなに広くなく、こぢんまりとしていて色んな場所に席が配置されている。
程よくあまり大きすぎない音量で、クラシック音楽が流れる。
目を閉じてクラシック音楽に耳を傾けている人、本を読んでいる人、ぼーっと考え事をしている人など、過ごし方は様々だ。
静かに音楽を嗜む場なので、会話をするのにはあまり適さない。

店内入った所すぐに、小説家「五木寛之」氏による寄稿が飾られている。
文頭にある「美作さん」とは、今はなき伝説の名曲喫茶「中野クラシック」のマスター「故・美作七朗」氏のことで、画家でもあられた方。
ヴィオロンは、店主の寺元氏が「中野クラッシックの様なお店を作りたい」と始められたお店なので、とても縁が深いのだ。
ちなみに伝説の名曲喫茶「中野クラシック」は、高円寺の名曲喫茶「ルネッサンス」に受け継がれている。

お店に入ると店員さんに「こちらです。」と席に促される。
歩くと「ギッ、ギッ」と床が軋む。
ここは通路部分。
大量のLPレコードが保管されている。

カウンター奥には、プレイヤーと真空管アンプが。

今回は、スピーカーにほど近い席に案内された。
しかし改めてスピーカーがすごく大きい。
マスター手製によるスピーカーらしく、高さは2mを超える。
地面が掘り出されていて、スピーカーは半地下の場所に設置されている。
コーヒーと自家製ケーキの実食

今回は、コーヒー(450円)と自家製ケーキ(250円)を注文。
コーヒーが運ばれてくるときに、店員さんから「ブランデーかミルクは入れますか?」と聞いて頂ける。
ミルクはよく聞かれるけど、ブランデーのサービスはとても珍しい。
今回は、通常のコーヒーを頂きたかったので、ブラックで頂く。

コーヒーは、おー良い感じのまろやかな中深煎り!
ほどよくグラッシーな枯草の風味があって、小さな酸味が心地良い。
冷めていくと酸味がどんどん前に出てくる。
美味しいなぁ。
お店の雰囲気にぴったりの味だ。

自家製ケーキは、非常にまったり滑らかなレアチーズケーキ。
甘さ控えめであっさりした生クリームがきいてすごくシンプルな味わい。
すごく美味しいなぁ。
コーヒーとのマリアージュも抜群だ。
終始コーヒーとケーキを頂きながら、クラシックに浸る。
目を閉じると、空気が澄んで、ここがどこだかわからなくなる感覚になる。
映像がない映画を見ている様だ。
1時間ほどぼんやりしていてお店を後にする。
1本の映画を見終わった様な、安堵した不思議な気分になっている。
この感覚が名曲喫茶独特で、普通のコーヒー店やカフェ、喫茶店では味わえない感じで好きだ。
名曲喫茶自体は数が減っているけど、今あるお店はいつまでも無くならないでほしいなぁと思う。
ではまた明日。