ツブサをご覧のみなさんおはようございます、ライター・ピアニスト・写真家の伊藤夏希です。
高円寺に関わる“若者”にフィーチャーし、その人の生き方や高円寺にまつわるエピソードを深掘りしていく「高円寺、若者たち」。
今回紹介するのは、今年の8月、ルック商店街で新たにオープンした「cafe &dining bar APOLLO」の店主 ゆうひさん（27歳）、けいすけさん（24歳）のおふたりです。
ランチではハヤシライスやタコライス、カフェ時間は生チョコやコーヒー、夜はカクテルなど、幅広いメニューを楽しむことができる「APOLLO」。
実は筆者がたまたま入店した際に意気投合し、それから高円寺阿波踊りでも筆者がお手伝いするなど、今や行きつけを超えた存在となっているお店です。
今回は、そんなふたりの過去や出会いと、お店をオープンするまでの経緯、そしてこれからのAPOLLOの未来について深堀していきます！
目次
一度見たかった夢と別れ、新たな夢を見つける
ゆうひ：ずっと陸上をしていたから箱根駅伝が強い大学に行きたくて、陸上の推薦で京都から東京へ上京しました。
寮生活で毎日朝は５時起き、門限は21時。お酒も飲めないし、とにかく練習漬けの日々。
でも3年生で駅伝はやめてしまったんです。駅伝に出場するメンバーを決めるレースがあって、ずっと本気で練習をしていたので「この調子だったらワンチャン出場できる！」と思っていたのですが、レース当日の朝に脚を壊してしまって…
「こんなに練習したのに脚を壊すってことは、神様にもうこれ以上走るなって言われているんだな」と思って、その日の朝、監督に「やめます」と宣言しました。でもやめたからって別に後悔はなかったです。逆にやり切ったな！と思ってて。
大学4年生になってからはイタリアンでアルバイトを始めます。ある日、バイト中にイタリアンの社長がたまたまご飯を食べに来てて、その社長に「君は飲食に向いている人間だ。お金を出すから、うちの系列店でお店をやってみないか？」と突然言われ、その時はお断りしたんですが、、でもうれしかった。
それくらいから徐々に「もしかしたら俺は飲食店向いているのかもしれない！」と意識するようになりましたね。
大学を卒業してからは、新卒で商社の営業に就職したものの、3か月で辞めることに。理由は当初伝えられていた配属先の東京ではなかったので「話が違うやん！」と思って（笑）
それからは恵比寿の焼肉屋で働くことになります。
有名人がたくさん来店するような焼肉屋で、すごく忙しかったんですが、お客さんと密にコミュニケーションをとるような仕事でもあったので、仲良くなったお客さんがまたお店に来てくれて、一緒に話したりして。
「こうやってお客さんと楽しむ飲食もあるんだな」と思って、その時に飲食の楽しさを感じましたね。
高校の頃からの夢を叶えるべく、飲食の道へ
けいすけ：僕は生まれも育ちもずっと沖縄で、高校を卒業してからは沖縄にある経理系の専門学校に行きました。
専門学校にいた頃は税理士になりたいと思っていたんです。だって、税理士になれば年収1000万円稼げるって聞いたから…（笑）
でもやっぱり税理士なんてなかなか簡単になれるものじゃないってことに気づいて、それから就職で上京することを決めて、東京の携帯ショップに就職しました。
元々高校の頃からずっと居酒屋でアルバイトをしていて、その当時から「いつか自分の飲食店を持ちたいな」と思っていたんです。だから、就職のときはすごく悩みました。
そのまま学生のときにアルバイトをしていた居酒屋で社員として入社してもいいなと思っていたし、でも飲食しか経験しないのも面白くないなぁとも思って、それで携帯ショップに就職することに。
スマホ教室をショッピングモールで開いたり、おじいちゃんおばあちゃんにスマホを売るような仕事をしたり。
だけどこれがあんまり楽しくなくて、半年で仕事を辞めてからは飲食の道へ戻ることに。新宿や池袋や浦安など、いろんな場所の居酒屋で働くことになります。
池袋の居酒屋バイトで出会ったふたり
池袋にオープンした居酒屋のアルバイトで、オープニングスタッフとして出会ったふたり。
けいすけ：オープニングスタッフとして入ったものの、全然忙しくなくて、バイト自体はマジで暇でした。
店員も少なくて、同じバイト仲間もゆうひさん以外大学生ばかりだったし、それもあって、ゆうひさんとはすぐに仲良くなりましたね。
ゆうひ：居酒屋自体は2021年の7月くらいにオープンしたんですが、オープン当初から本当に暇で、、半年くらいでお店も潰れちゃって。それから僕は１年間くらいUber eatsの配達員をしながら生活をしていました。
けいすけ：僕はその当時、池袋の居酒屋と並行して浦安の居酒屋でも働いていたので、池袋の居酒屋が潰れたタイミングで、浦安の居酒屋で正社員として働きはじめます。
ただ、長くその居酒屋に居ようとも思っていなくて、１年くらい働いてお金を貯めて、それから自分の飲食店を持てたらなと漠然と考えていました。
ゆうひ：池袋の居酒屋が潰れてからもよくふたりで会っていたんです。一緒に居酒屋に行ったり、ご飯を食べに行ったり。
けいすけ：そうそう、それがいつからかサイゼリアで打ち合わせとかするようになったんですよね！
ゆうひ：僕もずっと飲食店で働いていたのもあって、いつか自分のお店を持てたらなぁと思ってて。それをけいすけに伝えたら「じゃあ一緒にやりましょうか！」って。それからよくサイゼリアでお店をオープンするための会議をしていました。
けいすけ：ひたすら物件を探したり、お金の計算をしたり、資格を取ったり、開業するために準備を進めていましたが、ふたりともそこまでお金がなかったので、ひとまず間借りで場所を借りられるところを探すことに。内見まで行って、もうすぐオープンできそうってところまできたのに、結局契約の話が流れちゃったりでなかなか上手くいかなかったのですが、たまたま今年の６月に今のAPOLLOがある場所をネットで発見しました。
死ぬ気でオープンさせるんだ
ゆうひ：けいすけから「高円寺でこんな場所見つけたので、ゆうひさん面接行ってきてください」って急にLINEが来て、すぐにオーナーさんと面接をしてきました。結果、業務委託のような形で場所を貸してもらえることになって。
けいすけ：事業計画書なんて作ってなかったし０からのスタートだったので、とりあえず場所だけ貸してくれる方をずっと探していて、そしたらたまたまこの場所を見つけたので本当にラッキーでしたね。
ゆうひ：面接をしたのが6月中旬くらいで、それから１ヶ月で準備をして、8月1日にAPOLLOをオープンする予定だったのですが、前のテナントさんとの兼ね合いで、お店に本格的に入れたのが7月20日くらいで（笑）
メニューの試作とか、結局お店のキッチンでやらないとわからないことも多かったので、オープンまでの10日間くらいは死ぬ気でいろいろ詰め込みましたね。
このお店がオープンしてからは1日も休んでいないけど、オープンするまでの10日間は本当に鬱になりそうで、2日間くらいは休みました…（笑）
きっかけは、妹のバレンタイン
ゆうひ：フードメニューに関しては、けいすけが「ハヤシライスとかタコライスが食べられるお店、あんまりこの辺にないし、良くないですか？」って提案してくれて即決定。
お店のレイアウトも前の店舗からそのまま引き継いでいるので、この店内のレイアウトを見て「居酒屋ではないなぁ」と思って、この雰囲気に合わせて、ランチやカフェメニューを考えました。
けいすけ：元々イタリアンが出てきそうな雰囲気があったからパスタメニューは入れたいなと思って、ゆうひさんカルボナーラ好きだし（笑）
あとは、少し異質かもしれないけど、僕が沖縄県出身なので大好きなタコライスもメニューとして加えました。
この前もたまたま来てくれたお客さんが「今日、タコライスを食べに別のお店に行ったけど閉まってて、それでここに来たんだけど、こっちの方が美味しかった」って言ってくれて、本当にうれしかった…！
ゆうひ：APOLLOで売りにしている「生チョコ」は、実は昔から僕が作り続けているものです。妹が小学生の頃に、バレンタインで生チョコを作ってて、それを勝手につまみ食いしたら美味しくて。
そこで妹にレシピを教えてもらって、それから大人になってもたまに自分で作っていたんです。
ケイスケ：生チョコとお酒のセットってなんだか違和感を感じるかもしれないけど、その違和感もいいなと僕は思って！
ゆうひ：最初はお口直しくらいで、なんなら来てくれた人にサービスとして生チョコの提供を考えていたけど、「生チョコメインで全面的に推していきましょうよ」ってけいすけに言われて、今は生チョコ推しで頑張っています。
これが実は、夜によく売れるんですよね、お酒と一緒に楽しむ方が多くて。もっとカフェの時間帯でも売れれば良いなとも思っているんですが、スイーツメニューはまだまだ少なくて、、それこそ最近パフェの試作もはじめたので、もっとカフェの時間帯でもお客さんが来やすいようなメニューを今後も考えていきたいです。
けいすけ：このお店のコンセプトは「生チョコでみんなを笑顔に！」
ゆうひ：・・・ないわ〜。
ぼくらとお客さんでAPOLLOを作り上げる
正直先のことはぼくらもまだわからないです。お店も本当に勢いでオープンしたので。
でも、まずは常連さんを増やして、来てくれる人たちが楽しいと思ってもらえるような空間を作っていきたいなと考えています。
あと、お客さんはもちろんだけど、ぼくらが楽しむのもきっと大事なので、APOLLOに来てくれるお客さんたちと一緒に楽しい空間を作れればなと。働いているぼくらが楽しんでいれば、きっとお客さんにも楽しいと思ってもらえるような時間を提供できると思うので。
逆にお客さんが楽しんでくれれば、きっとぼくらも楽しめると思う。
だから、来てくれる方々と一緒に、このAPOLLOをもっと良いお店にしていきたいです！
「cafe & dining bar APOLLO」プロフィール
cafe & dining bar APOLLO
2023年8月1日、高円寺のルック商店街に新たにオープン。
ポケモンカードが好きなゆうひと、彼女募集中なけいすけのふたりで働いています！
＜APOLLO・SNS＞
ライタープロフィール
伊藤夏希
1998年生まれ。宮崎県出身、高円寺在住。
武蔵野音楽大学演奏学科を卒業後、ライター・写真家・ピアニスト・ピアノ講師・YouTuberとして活動中。
10月15～31日 伊藤 夏希 写真展『陽炎は終わらない』を開催予定。
