吉本最弱芸人・おふろは、健康で文化的な最低限度の生活を「杉並で」営む権利を有する。vol.7

吉本芸人おふろ
文章・おふろ(早崎 貴宏)
高円寺

ツブサをご覧のツブサーの皆様いつもお勤めご苦労様です。

杉並区で最低限度の生活を営まさせて頂いております、吉本興業所属「おふろ」でございます。

(左 早崎 右 井上)

今日も東京の公道を歩ける事に感謝しながら、擦り減った靴で大地を踏み締めております。
ちなみに我々、踏み締める事はあっても踏み倒すことは致しません。
安心してご融資の方ご検討ください。

お察しの通り、常に切迫している我々は円安などなんのその。
「アルバイト・酒飲み・支払い」の借金為替市場。
ディカプリオもびっくりのウルフ・オブ・ウォール ストリートに興じております。
気合い入れていきましょう。

さて、恐ろしいことに暦は10月。
”今年も終わるね”なんて声も聞こえて来ますが、 我々からしてみれば”今年も終わってるね”ってな具合です。

 読書の秋、食欲の秋、運動の秋、借金の秋。
もし皆さんの周りにアンジェラの秋なんていう輩がいたらぶっ飛ばしてあげて下さい。
我関せずは日本人の悪癖です。

10月と言えばハロウィンでしょうか。
コロナ禍になってからは鳴りを潜めていたように思えますが、遂に出ましたね。
マスク外して行こうぜのGOサイン。
ドラクエばりの作戦を国のリーダーが出したものですから今年のハロウィンは盛り上がるんじゃないでしょうか。だとしたら詠まずにはいられません。

”ハロウィンだ マスク外して またマスク(仮面)”

すみません。
僕、秋になると詠みがちなんですよ。
読み違いというか。困っちゃいますよ本当。
次詠んだらぶっ飛ばして下さい。



さあ今回は、我々おふろが主戦場としている”神保町よしもと漫才劇場”での出番がある日の流れを少しばかりご案内。

吉本興業の芸歴9年目以下の芸人により構成された吉本運営の劇場で、その名の通り神保町に鎮座しています。

 (JR御茶ノ水駅からも近いよ)

この劇場ではメンバー制が採用されていましてね。
高校野球で言うと、レギュラー・ベンチ・スタンド応援で分かれています。

我々おふろは現時点でベンチ。
月3~4本劇場出番を頂いてる状況です。
少なっ。

高校野球と違うところは、スタンド応援の人たちは全く応援していないところですかね。
負けろと願い続けています。
少なくとも僕はそうでした。

どういう事か。

現時点では、神保町よしもと漫才劇場に所属出来る芸人の数は60組程度と数が決まっています。
所属の芸人には優先的にオーディションが回されたり、毎日の劇場 出番が用意されていく。

ではどうやってメンバーが決まっていくか。

一年ほど前。
この劇場メンバー制度が始まった時に盛大なバトルライブがあったんですね。
20組ほどで3分ネタを披露していき、お客様・社員・作家の総得点で順位を決める。
そしてメンバーかそれ以外かに分けられました。
当時おふろは当落線上にいましたが、しっかりと敗北。
絶対負けたくなかった。何故か。

実は事前に全芸人に伝えれられていたんです。
プロとアマチュアを分けます、と。
プロとアマチュア。月とスッポン。ぐりとぐら。は?
アマチュアの烙印を押された我々は、この先どうなるのか不安でいっぱい。

そして見事に不安的中。
それまではランク制度でクラス分けされており、出番格差はあったもののどの芸人にも定期的に舞台出番がありました。
それが一転、所属出来なかった芸人は“無“。
なーんにもありません。
月に一本、それはそれは小さな劇場での3分ネタライブのみ。

何も無いから自分達で吉本以外のライブを探すしかない。
そこでネタを磨き、二ヶ月に一回開催される、劇場メンバーへの挑戦権を得るためにバトルライブを勝ち上がっていく。
そして入れ替え戦で勝利すれば晴れて劇場メンバーになれますよ、 と。

これがなかなか過酷でしたね。
勝てそうで勝てない。

 バトルライブ終わりの“ダメ出し“(作家さんからの指摘というかアドバイスというか)でボロクソに言われたり、シンプルに激スベりしたり。

そうなるとコンビ仲も悪くなる人が多いのか解散もよく耳にしました。
我々は根本的に頭が悪いのでそこまで考えが至りませんでしたけれども。セーフ。

そんな中でもコツコツ続けていき、二ヶ月ほど前。
ようやく劇場メンバーに昇格する事が出来たのであります。

いやあ嬉しかったですね。
その夜は二人で抱き合い祝杯をあげ朝まで語り明かした、
なんて事は無く淡々と帰路に着きましたけれども。

そんな思い入れのある劇場出番。
それはそれは一々気合が入るというもの。
気合が入れば腹が減る。
こんなに腹が減る喜びを感じられるのはスタンド応援で歯がゆい思いをしていたからでしょう。
空腹最高。

神保町で腹が減ったらとにかく歩く。
危ぶむなかれ、迷わず行けよ、行けばわかるさ、カレーしかないから。

という事で闘魂を燃やしながら着いたのがこちら「カレー屋 ばんび」さん。

 カレー激戦区の神保町で柔らかな空気を醸しだす癒し系。

すかさず癒し系対決を申し込みましたが、完全に引き分けでした。

癒し系はお腹いっぱいなので早速店内に突入。

注文はすぐに決まりウキウキ気分で待っているところ、ふと井上に目をやると、この表情。

 流石、次の出番に向けて思案しているんでしょう。
何気なくケータイを覗き込むと、、

漫画読んでるだけでした。

どうせどこかの海賊違法サイトで閲覧しているんでしょう。
でないとあんな海賊顔にはならない。
お金は無くとも、モラルと誇りは失いたくないものです。

そうこうしているうちに届いたカレーがこちら。

シンプルイズベストとはまさにこの事。
神々しささえ感じます。

お店一番人気のポークカレー。
三枚肉が見るからにトロトロ。
優しい顔してスパイシーな香りが立ち、唾液腺をぶるぶる震わせてきます。

気持ち強めの辛さを喰らえば箸、いやスプーンは止まらず爆食街道まっしぐら。

恐ろしいことに胸にFATの文字が浮かび上がって来ています。

DEATHの文字が出てこ ない事を祈るばかりです。

少し目を離した隙に完食していた井上。
彼曰く”カレーは飲み物というのは過去の話。
元々自分の中にあったものを取り戻しているだけ。
カレーは欠片”との事。

供述は以上の通り。
追加注文をしようとしていたので怖くなり置いて行きました。

今回、劇場の仕組みがどうだとか書かせて頂きましたが、出演している芸人は本当に面白い人ばかりです。
神保町には美味しいカレーも山ほどあるので是非足を運んでみて下さい。
というか僕らのライブを観に来て下さい。

その積み重ねで、最低限度の生活から抜け出せるかも知れませんし!

ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
またお会いしましょう。



※次回の更新予定は、11月中旬頃を予定しております。

プロフィール

写真左:早崎 貴宏(はやさき たかひろ)

1990年5月26日 ふたご座 AB型 右投右打
吉本興業所属 お笑いコンビ”おふろ”として活動中。
小学生の頃に兄の影響で野球を始め、大学の野球部で相方の井上と出会う。
現在は、父の影響で始めたパチンコで抱えた借金を返済しつつお笑い活動をしている。