杉並区にゆかりのある人々の暮らしやカルチャーに焦点を当てる「ツブサ・スギナミ」。
今回取材したのは、吉本興業所属 キイロイゾウサンのSIZUKU氏。
宮崎の田舎町から飛び出し、大阪でのフリー活動、YouTubeでの“ハーレー乗り”としてのバズり、そして吉本興業への所属という、まるでジェットコースターのような経歴を持つ彼だが、現在は杉並区に拠点を置きながら、漫才師としての確固たる地位を築くべく奮闘中だ。
「もっと高円寺っぽい人間になりたい」と笑う彼に、これまでの波乱万丈な道のり、芸人の多い街、高円寺でのディープでありながら少し不器用な日常、さらに今後のお笑いに対する情熱まで、たっぷりと語ってもらった。
目次
宮崎の“自称・一番面白い奴”が、借金してハーレーに乗るまで

ーーSIZUKUさんは宮崎県出身とのことですが、どのような経緯でお笑いの世界へ?
SIZUKU:これ、イキリじゃないんですけど……やっぱり地元って狭いじゃないですか。僕の出身の宮崎県小林市なんて本当に田舎で、必然的に「自分が一番面白い」って思っちゃってたんですよね。それで高校卒業して大阪に行って、「俺より面白い人ってどれぐらいいるんだろう」って飛び込んだのがきっかけです。 相方は同じ宮崎の都農町出身なんですけど、知り合ったのは大阪なんですよ。当時Twitter(現X)で、大学生だった相方からDMが来て、そのままご飯に行って意気投合したのが「キイロイゾウサン」の始まりですね。
ーー大阪時代はフリーで活動されていたんですよね。当時の状況はどうでしたか?
SIZUKU: 19歳から21歳くらいで若かったから、とにかく怖いもの知らずでしたね。事務所にも入らず、街で声を掛けてお客さんを引っ張ってきて、自分たちでライブを主催したりして。そこに“例えば炎”とか“cacao”とか、“にぼしいわし”さんらにも出ていただいて。今思えばすごいメンバーでした。
東京に来たての頃にラジオを一緒にやってたりしたカナメストーンさん含め、当時の仲間たちがどんどん売れていくのを見ると、「早く追いつかないと」って本気で焦ります。
ーーその後、大阪から東京へ拠点を移し、NSC(吉本興業の養成所)に入り直したと
SIZUKU: 相方が大学を卒業したタイミングで上京したんですけど、それがちょうどコロナ禍と重なってしまって。ライブもできない、動けない。じゃあ「一旦YouTubeやるか。1年間で登録者1万人いかなかったら解散しよう」って条件で始めたんです。
最初は流行りのYouTuberの劣化版みたいな企画をやってたんですけど、当たり前に面白くないから全然伸びなくて(笑)
その時、僕が「お金ない芸人がハーレー買います」みたいな動画を出したら、それが謎にバズっちゃったんですよ! もう後に引けなくなって、借金して中型・大型免許を急いで取りに行って、本当にハーレーダビッドソンを買いました。そしたらチャンネルが完全に「ハーレーファン」に占拠されて、そのまま登録者1万人いっちゃったんです。
その勢いで日本一周も達成しましたね。YouTubeの目標をクリアして、満を持してNSCに入ったのが4年前。今年で上京して6年目になったところです。
引っ越し7回!結局いつものロッキーカナイで「高円寺ライフ」

ーー現在は杉並にお住まいとのことですが、杉並での暮らしはどうですか?
SIZUKU: 上京して4年くらいなんですけど、高円寺と中野をずっと行ったり来たりして、すでに引っ越しを7回もしてるんですよ。もう自分でも何やってるんだろうって。サーカス団なのかもしれないって思いはじめてきました。当時はアホだったんで、付き合ってる彼女と突拍子もなく「同棲しちゃおうぜ」って言って、3ヶ月で別れて同棲解消して、引っ越し代で金が飛んだり…
今は一人暮らしなんですけど、芸人って安い家に住んで、結局外に飲みに行っちゃうじゃないですか。だから「少し家賃の高い良い家に住めば、家飲みが増えて節約になるんじゃないか」と思って今の家にしたのに、結局外に飲みに行くんですよ! ただ家賃が高いってだけで、また高円寺の街に吸い寄せられちゃう。負のループです。
ーー高円寺では、よくどのお店に行くんですか?
SIZUKU: 結局、仲のいい芸人仲間がいる「ロッキーカナイ」ばっかりですね。芸人仲間が働いてるからってのもあって。で、そのあとカラオケ酒場の「ハイビスカス」に寄ってベロベロになって帰るのがルーティンです。あとは立ち飲みの「ももや」とか。 でも、最近ロッキーカナイの炭酸が1本500円になったんですよ! 前まで炭酸無料だったから焼酎ボトルで頼むのが最強に安かったのに。絶対、僕らみたいにお金のない芸人がお通しとチューハイだけで長時間居座るから、「こいつらから金取ったろ」って店側にバレたんだと思います。
あと、せっかく高円寺に住んでるのに、おしゃれなカフェもなかなか行けずで「サンマルクカフェ」とか行っちゃうんですよ。ラーメンもよく食べに行きますけど、僕、一定のラインを超えたら全部「うまい!」ってなっちゃうバカ舌なんで、オススメを語れるほど舌が肥えてないんです。高円寺のディープなグルメを語るには、まだ僕の口内状況が追いついてない。自分では高円寺の人間になったつもりでいますけど、まだまだ“つもり”なだけかもしれません。
ーーもっと高円寺に溶け込みたいという思いは強い?
SIZUKU: ありますね! 高円寺って人間くさい街だから、僕は来るべくして来たんだなって思うんです。最初は「芸人が多い街だから」っていうミーハー心でしたけど、住んでみるとこの街の住民になろうとする自分がいて。寅さんみたいに、そこらじゅうに知り合いがいて「元気にやってる?」って挨拶できるような、高円寺っぽい人になりたいです。 いつも芸人とばかり飲んでて、初対面の人だとついキャラを作っちゃって降りられなくなる癖があるんですけど、本当は知らない人とでも節度を持ってアツい話をしたいんですよね。だから伊藤さん(インタビュアー)ともこれからアツい話、この後しましょうね。
「耳をすませば」から「君の名は。」まで。ベタを愛するSIZUKUの素顔

ーーお名前の「SIZUKU」という表記、お笑い芸人さんとしては珍しい響きですが由来は?
SIZUKU: これ、ジブリの『耳をすませば』が大好きで、主人公の月島雫ちゃんからいただいたんです。あ、これ話し出したら4時間くらい話が止まらないんですけどいいですか?
ーー今の4秒くらいの説明で分かったので大丈夫です!ジブリも含めて映画がお好きなんですか?
SIZUKU: 実は、映画の中で一番好きなのは新海誠監督の『君の名は。』なんです! これ、自分で言っててシャバイと思われるかもしれないですけど、今思ってますよね?だけど本当に大好きです。
大阪で一人暮らししてた時に、宮崎のお母さんがDVDプレーヤーを送ってくれたんです。それでTSUTAYAで『君の名は。』を借りて観たんですけど、DVDプレーヤーの設定がよくわからなくて、なぜか副音声オンの状態で再生しちゃって。例えば、隕石が降ってくる瞬間に女の人の声で「隕石が降ってくる」って解説が入るんですよ。極め付けは、最後手のひらに「すきだ」って書いてある超名シーン。手を開く直前に、副音声で「手のひらに好きだと書いている」って全部言われちゃって…でも、そんなに邪魔されても僕、ボロボロに泣いたんですよ。 だからもう、僕の中でNo.1は揺るぎません。 最近の若い人ってマイナーなものを好きって言うのがかっこいい、みたいな風潮ありますけど、みんなもっと力抜いたら絶対に『君の名は。』が1番好きって言うはずです!伊藤さんも一旦力を抜いてみてください。
ーーベタな作品もやっぱり良いですよね!音楽の好みも割とメジャーなアーティストがお好きなんですか?
SIZUKU: 音楽は「ラッキーオールドサン」が好きですね。
ーーめちゃめちゃマイナーじゃないですか!
SIZUKU: (笑)。これあるあるだと思うんですけど、好きなアーティストのライブでも長すぎると途中で帰りたくなる時ありません?若手芸人も、せっかく来てくれたからって1時間半とか2時間もネタを詰め込みすぎちゃうことがあるんですけど、ラッキーオールドサンは1時間くらいでサラッとやってくれる。その潔さが素晴らしいんです。僕らのライブも、そうありたいですね。
漫才師としてのプライドと、今年のお笑いにかける覚悟

ーー現在は東京でどのような活動をメインにされているのでしょうか?
SIZUKU: 劇場でのライブと、ルミネtheよしもとで前説をやらせてもらうのがメインですね。前説での繋がりからNON STYLEさんのライブに呼んでいただいたりもして。東京はやっぱりすごいですね。大阪でもやってましたけど、周りがビッグネームばかりで、本当に環境を変えて良かったなと感じています。 ただ、YouTubeにNSC時代のネタが上がってるんですけど、あれは本当に消したいです(笑)今のスタイルと全然違うし、今の自分たちの方が断然面白いんで!
ーー賞レースへの思いもあったり?
SIZUKU: M-1グランプリは今までいけて3回戦だったんですけど、いや〜今年はマジで自信ありますよ。去年やっと自分たちにしっくりくる「型」というか、フォーマットを見つけられたんです。今はそれを必死にブラッシュアップしているところで。 だから今年は、なんだかわからないけど、良いところまでいける確信があるんです。自分たちに期待して、賞レースにも食らいつきたいですね。
ーー賞レース以外だと、今後の目標はありますか?
SIZUKU: もちろんテレビにも出たいですけど、今はとにかく「漫才」。プロの芸人さんや劇場のお客さんから「良いネタだね」と評価される漫才師になりたいです。それでいつか全国ツアーを回れるようになりたい。 この高円寺という街もそうですが、もっと街に馴染んで、もっと多くの人に「面白い」と思ってもらいたいです。それと併せて、SIZUKUという人間の人間味の部分で「面白い」と思わせたいです。大阪時代の同期や仲間たちがどんどん売れて、テレビの向こう側に行っているので、僕らも早く追いついて、追い越したいですね!
【キイロイゾウサン SIZUKU】プロフィール

キイロイゾウサン SIZUKU
1998年、宮崎県小林市出身。吉本興業所属。
大阪でのフリー活動を経て上京。ルミネtheよしもとでの前説などで活躍中。
上京直後のコロナ禍に始めたYouTubeチャンネルでは、借金をしてハーレーダビッドソンを購入し、日本一周を達成して登録者1万人を突破するという異色の経歴を持つ。
芸名の「シズク」は、大好きなジブリ映画『耳をすませば』の主人公・月島雫から。
5月8日に開催された「Kakeru翔チャレンジバトルEAST」にて、「Kakeru翔メンバー」所属(新劇場メンバー)が決まる。
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【取材執筆・写真家 伊藤夏希】プロフィール

伊藤夏希
1998年、宮崎県生まれ、高円寺在住。
武蔵野音楽大学を卒業後、写真家 / 音楽家として、東京・宮崎を拠点に活動する。
2023年に開催した初の写真個展「この街で生きた、あの頃のこと。」を機に、これまでに計7回の写真展を行うほか、“伊藤日記”での名義でカフェやイベントを中心とした演奏活動、音楽配信も行う。
2026年6月、下北現像所にて8回目となる写真展、またZINEの出版も予定。
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