杉並区にゆかりのある人々の暮らしやカルチャーに焦点を当てる「ツブサ・スギナミ」。
今回取材したのは、吉本興業所属「ナユタ」のホリコシ氏。
早稲田大学お笑い工房LUDOで結成され、アマチュアながらM-1グランプリ準々決勝進出という快挙を成し遂げた彼らは、2025年、満を持して吉本興業へと所属しプロの門を叩いた。
そんなナユタのホリコシは、芸人としてのみならず、初のエッセイ集『同じ蚊に刺された』を上梓するなど独自の観察眼を持つ表現者としても注目を集めている。かつて青梅から時間をかけて都心へ通っていた彼は、プロ入りを機に中野・杉並エリアへと居を移した。
日々の“余白”を愛する彼が、プロ1年目を経て見据える景色とは。その現在地を紐解く。
目次
“声に出す”ことで手繰り寄せた、プロ1年目の縁

ーー2025年の4月からプロとして活動されて、ちょうど今1年ほど経ちましたね。芸人としてこの1年はいかがでしたか?
ホリコシ:仕事の幅は間違いなく広がりました。相方の地元が仙台なので、宮城でのレギュラー番組が始まったり、エッセイ本を出せたのも吉本の出版担当の方のおかげですし、その出版担当の方が、憧れであるピースの又吉さんに「最近、若手が本を出したんですよ」と繋いでくださったのも、プロになったからこその縁だなと感じます。
ーー先輩芸人さんとの交流も増えましたか?
ホリコシ:そうですね!高校生の頃から劇場に通うくらいオズワルドさんのファンなんですけど、初めて一緒になった時に「写真撮ってください!」って伝えたら、それを覚えていてくれていて。「漫才リーグ」という企画で、オズワルドさんに呼んでいただいてチームに入れてもらえたときは本当にうれしかったです。
大阪でのライブだったんですが、オズワルドの伊藤さんが後輩8人分の宿泊費を全部払って、夜も飲みに連れて行ってくださったりして…優しすぎますよね。
今漫才の時に着ている衣装もカナメストーンさんに選んでもらったり、靴も実はオズワルドの伊藤さんに買っていただいたものなんです。
ーーそれはかなりうれしいですね…!
ホリコシ:やっぱり好きなことをきちんと好きと言ったり、やりたいこともきちんと声に出すことが大事だなと思った1年でした。オズワルドさんに「高校生の頃から見てました!」と伝えて写真を撮ってもらったことがきっかけで覚えてもらえたり、本を出したいと言い続けてエッセイ本を出せたことで、別の雑誌でずっと好きだった小原晩さんとの対談の機会をいただけたり。
とにかく声に出すことで、景色が目に見えて変わっていくのを実感した1年でした。
日々の“余白”を綴る『同じ蚊に刺された』

ーーエッセイ『同じ蚊に刺された』も拝読しました。日常の切り取り方がすごく繊細で、思わず共感してしまうシーンも多かったです。
ホリコシ: ありがとうございます!元々noteを始めたのが大学4年生の頃で。周りの先輩たちが書いていたのに影響されて書き始めたんですが、いつか自分も出版物を出したいなという欲望はずっとあったので、こうして形にできてうれしいです。noteの再録も多いですが、プロになった4月1日の話など書き下ろしも入っているので、普段noteを読んでくださっている方も楽しめる内容になっているかなと思います。
ーータイトルの『同じ蚊に刺された』というフレーズも、どこか含みがあって印象的ですよね…!
ホリコシ:作中に出てくるフレーズなんですが、これかなりエロいですよね。エロさに気づいていない人が多いと思うんですが、すごいエロいと思ってて。エロ自由律俳句を自分で作ってみようと思ってできた言葉なんですけど、自分以外の人が同じ蚊に刺されたって、だいぶエロくないですか?
なんかエロいって言っちゃうと下品なものに見えますけど、こうした官能的なものもすごく好きなんです。
ーー作中に出てくる中野の「ミスド」や「ベローチェ」も印象的なのですが、執筆もそういった場所で?
ホリコシ:読んだ人みんなから言われるんですけど、ミスドは本当に好きなんですよね〜。中野のベローチェは、オードリーの若林さんがラジオで「中野のブックファーストに行ってからベローチェに行く」と仰っていたのに憧れて行ってみたりしています。
あとはドトールも好きなんですけど、最近はエクセルシオールで作業したりすることも多いです。
ーー文章からもこうしてお話ししている中でも、すごく普遍的で背伸びしていない感じが、ホリコシさんの魅力なんでしょうね…!
ホリコシ:そう言っていただけてうれしいです!元々小原晩さんのエッセイや今泉力哉監督の映画のような、独特の「余白」があるものが好きなのかも。特に映画『街の上で』は映画作品の中でも一番好きなんですよね。ちょっとコントっぽさもあって、何も起きない時間がずっと続いているような感じの映画なんですけど、あの余白たっぷりな感じとか大好きです。あとはジブリの『コクリコ坂から』なんかも、ただ髪を乾かしているだけのシーンが20秒くらい続くんですけど、あの“生産性のない時間”に昔からすごく惹かれるんですよね。
ーーそれこそ映像作品に自分が出演したいとか、作りたいって考えも?
ホリコシ:もちろんあります!出演できたりしたら楽しいだろうなってめっちゃ思いますし。
自分に実力があるなんてことはまだ言えないけど…ジャルジャルの福徳さんなんかもうすごく羨ましいです。書いた本が映画になって全国で見られたりなんかしたらすごくないですか?そういう欲望はずっとありますね。今後そんな機会があるといいなぁ。
街の小さなお笑いも大切に。これからの表現やお笑いについて

ーー地元の青梅から中野・杉並エリアへ引っ越してきて、生活はどう変わりましたか?
ホリコシ:青梅には申し訳ないんですが、やっぱり圧倒的に便利ですね(笑)。青梅にいた頃は一度都内に出たら「帰る」という選択肢がなかったので、どこかで時間を潰すしかなかったけど、今は何か仕事やライブを終えたら一旦帰宅することもできるし、中野や高円寺、阿佐ヶ谷でのイベントも多いので、会場も近くて助かります。
この取材で使わせてもらっている「ドッグベリー」みたいに、深夜まで開いているカフェがあるのも最高ですね。とはいえまだまだ行ったことない場所ばかりなので、いろんなお店も開拓していきたいです。
ーー高円寺や阿佐ヶ谷でのライブやイベントもよくされていますよね。
ホリコシ:高円寺だと劇場の「高円寺ジュンジョー」があるのでライブやイベントもちょくちょくしますし、あとは阿佐ヶ谷の区民センターで、元家族チャーハンの大石さんと、元キャプテンバイソンの哲郎さんと3人で「大喜利スーパーキッズ」というイベントも定期的に開催しています。
吉本以外の他事務所の人を毎回一人ゲストで呼んで会議室でやってるんですけど、結構そういう距離の近いライブが好きで。
いや、もちろん吉本の劇場も好きですけど、急に地域のちっちゃいスペースでお笑いライブが現れた感じが好きなんですよね。劇場だけでなく、ふらっとラフに見に行けるお笑いも大切だなと思います。
ーーイベント以外でもよくこの街で遊んだりしますか?
ホリコシ:高円寺はやっぱり古着の街でもあると思うので、「Re’all」で奮発して服を買ったりもしましたね。店員さんがすごく気さくで優しくて思わず買っちゃいました。
あと店名は忘れちゃったんですけど、阿佐ヶ谷で夜中に営業終了してるはずのお店にたまたま入ったときに、そこに金井球さんと店主のおばちゃんがふたりで飲んでて「もうね、この時間は知ってる人しか入れないんだけど、いいよ」って言ってくれたのがめっちゃ良かったんですよね。
そこで飲んだ後に近くのレコードバーに行ったら、バンドのシャムキャッツがいたり、あの日すごく良かったな…カルチャーの街を感じたというか。

ーーまさにカルチャーの街に根付いたイベントも多くされているので、ライブやイベントもまた楽しみにしています!これからの活動はどんな目標を掲げていますか?
ホリコシ:お笑いの目標としては、今年こそM-1グランプリの準決勝にいきたいです。毎年準々決勝までなので、決勝にもちろんいきたいですが、まずは準決勝の舞台に立ちたい。 それと同時に阿佐ヶ谷の会議室でやっているような、お客さんとの距離が近いラフなライブも大切にしていきたいですね。

ーー個人としての目標はありますか?
ホリコシ:個人のYouTubeはやってみたいですね。インパルス板倉さんのYouTubeがすごく好きなんですけど、ハイエースで車中泊する動画で、冷蔵庫に「これは入れる、これは入れない」って分けるだけの時間があるんですよ。そういう生産性のない余白のある感じがやっぱり好きなので、個人としても、Vlogなんかで「頑張らない感じ」を見たいし、見せたいっていう欲望があります。
あと、この1年はやりたかったことをたくさん叶えられたので、これからもやりたいことはどんどん口にしていきたいです。実力はまだまだですが、着々と繋がってきたいろんな縁を、もっと大きなものにしていきたいですね。
【ナユタ・ホリコシ】プロフィール

ナユタ ホリコシ
2003年、東京都青梅市出身。吉本興業所属。
早稲田大学お笑い工房LUDOで出会った二人でコンビ結成。
結成した翌年には、アマチュア同士のコンビで唯一、準々決勝に進出しベストアマチュア賞を受賞。同年、大学生漫才師の頂点を決める大会である「大学生M-1グランプリ」で優勝。
2025年4月1日から吉本興業に所属し、同年8月より渋谷よしもと漫才劇場に所属。
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【取材執筆・写真家 伊藤夏希】プロフィール

伊藤夏希
1998年、宮崎県生まれ、高円寺在住。
武蔵野音楽大学を卒業後、写真家 / 音楽家として、東京・宮崎を拠点に活動する。
2023年に開催した初の写真個展「この街で生きた、あの頃のこと。」を機に、これまでに計7回の写真展を行うほか、“伊藤日記”での名義でカフェやイベントを中心とした演奏活動、音楽配信も行う。
2026年6月、下北現像所にて8回目となる写真展、またZINEの出版も予定。
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