単独ライブが8月7日に杉並公会堂にて行われる(大阪公演は8月11日)。絶賛準備中でまだ予約してない方は是非ともお越しいただきたい。
単独ライブというのは良い。もし、お笑いライブが好きで寄席には行ったことがあるけれど、単独ライブに行ったことがない人はこれを機に挑戦してみてほしい。大好きな芸人、好きな芸人、普通の芸人のいろんなネタがしこたま見れる。普段ライブでやらないような挑戦的なネタから、迫り来る賞レースのために生まれた至極のネタの卵など、心躍って楽しい。また幕間のVTRにも芸人のこだわりが詰まっていて、芸人の頭の中を覗ける喜びはひとしおだ。
単独ライブというのは1時間以上の公演時間をその芸人や知り合いの作家だけで内容を考えて、練習して、演出して行う。だから、その芸人がやりたいことが色濃く出る。やりたいことが色濃く出るということは、芸人が芸人になった理由がわかるのだ。単独ライブはほぼ原液である。
お笑いファンからするとこう言うだろう。好きな芸人の単独ライブを行くのは当たり前である、と。確かにそうである。そんな皆様には是非とも好きな芸人以外、すなわち、「どうでもいい芸人」の単独ライブにも行ってほしい。名前だけ知っている芸人、テレビでしか見たことがない芸人、寄席で見たことはあるけれどいまいちハマらなかった芸人。そんな「どうでもいい芸人」の単独ライブこそ、奇跡の出会いがあるかもしれない。
テレビでは、寄席では、イマイチだったあの芸人も、単独ライブで見ると一味違う。それは、この公演を全て自分たちだけで成立させなければいけないという責任感が違うからだ。この責任感は人間の見た目をも変える。いつもより少しだけ痩せていて、彫りが深くて、とにかくとにかくかっこいいのだ。
単独ライブの凄さを知っていただいたところで、我々の単独ライブの話をしたい。
通常、お笑い芸人の単独ライブというのはネタをやって幕間のVTRがあってを何周か繰り返すものが多い。芸人のネタと企画を堪能できるスタンダードな形だ。しかし我々は違う。
おいおいお前らの話はいいよとブラウザバックをしようとしているそこのあなた、少しだけ話を聞いてほしい。少しだけと言ってるけど本当は最後まで聞いてほしい。
私たちの単独ライブはそのスタンダードな形とは少し違う。今年でもう7回目になる。全て違うテーマでやっている。電動回転盤を使ったネタをたくさんした第3回、舞台上に階段を設置してそれを使ったネタをたくさんした第4回、日常の辛いことをコントにしそれを漫才に昇華する構成の第5回、舞台上に客席を設置してお客さんを含めたネタを披露した第6回、そして今回、90分の長編コント単独に挑戦する。
私は、単独ライブが一番好きで、単独ライブに一番きてほしい。私が芸人をしていて一番楽しい時間だ。単独をやるために芸人をやっているといっても過言ではない。自分の脳みそで起きたことを薄めることもなく剥き出しの原液のまま表現できて、それで喜んでくれる人がいるこの奇跡を毎度毎度噛み締める。
と、いいつつも、私は毎年夏に行われる高円寺阿波おどりを見ていない。
急に杉並感をぶち込んでかたじけない。書くことがないから阿波おどりを出してきただろうと冷笑している読者もいるだろう。少しだけ話を聞いてほしい。
私はこの杉並区近辺に上京したときに高円寺阿波おどりは見た方がいいとたくさんの先輩たちに幾度となく言われてきた。連と呼ばれる踊り手が高円寺の街を練り歩く。踊り手は1万人以上にも達し、観客は2日で100万人以上にも上るとされている。根っからの陰湿な私は、どうせ楽しい人が楽しいだけのお祭りやろ、と最低な感想をぶら下げながら上京してから見ることができたはずの2回の高円寺阿波おどりを見ずに過ごした。
おそらく今年も見ないだろうと思っていたその矢先、私は高円寺北口駅前のマクドナルドの高円寺マシタに面している窓際のカウンターで単独ライブのネタをパソコンでぽちぽちと作成していた。煮詰まって焦る私とは裏腹に休日の高円寺では、楽しみながら街を散策している人間が易々(やすやす)と視界に入ってくる。窓際の席にしたことを大変後悔していたら、鈴や太鼓の音がだんだんと聞こえてきたのだ。
集中が切れた私がふっと顔を上げるとマシタ横の広場で、プレ阿波おどりなる前哨戦が始まったではないか。8月末の本番に向かって、衣装を揃えた踊り手たちが音に合わせてきびきびと踊っている。ぼーっとそれを見ていると、あれよあれよという間に見物客が取り囲んだ。
自身の単独ライブと雲泥の差だなと、比較対象にならないはずの高円寺阿波おどりにジェラシーを感じて視線をパソコンに向ける。でも少し気になる。かわるがわるの思考に翻弄されて、再度阿波おどりの方を向くと、なんと、見物客がほぼ全員踊っている。
「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損損」を肉眼で確認できた。老若男女がこの暑い中、楽しそうに踊っているのだ。通行人の人目もくれず。恥ずかしいという気持ちもなく。それを見て私は人生を省みる。
実は、単独ライブの集客がないことが大変恥ずかしかったのである。前半ではカッコつけて単独ライブのあれこれを偉そうに宣(のたま)ったが、何よりも単独ライブの集客がないのが恥ずかしかった。たくさんの人に来てほしいという気持ちはもちろんある。ただ、心の中に少しだけ、集客がないのが恥ずかしいという気持ちで膨らんでいた。周りの芸人は何公演もしているのに私たちはまだ大阪東京で席がまだまだ空いている。我々は「おもしろくない」という証明のように感じ、自信を失っている。手伝ってくれている方々に顔向けできない。予約してくれている数少ない我々のファンの方々にも申し訳ない。
私の人生は常にそうだ。人からどう思われているかが全ての決定権で、自分がやりたいからと人目を気にせず没入することはあまりない。そういう人生を過ごしてくると、自分が一体何をしたいのかがわからなくなってきた。
阿波おどりを終えた見物客たちは散り散りに各々の人生に戻っていく。それが私にはとても勇ましく、かっこよく見えた。決めた、私は阿波おどりみたいにお笑いをやる。やりたいことをやる阿呆と求められていることだけをやる阿呆、同じ阿呆ならやりたいことをやらねば損損である。そして私は8月29日、30日のスケジュールが空いていることを確認した。

にぼしいわし・伽説(ときどき)いわし

にぼしいわし・伽説(ときどき)いわし
1992年、大阪府出身。お笑い芸人「にぼしいわし」のツッコミ、ネタづくり担当。
2023年に拠点を東京に移し、個人事務所である「株式会社 A-dashi」を設立して活動中。
女芸人No.1決定戦 THE W 2024年大会にて第8代目女王となった。
また2025年12月に自身初となる著書『しょぼくれおかたづけ』をKADOKAWAより発売。
<SNS>
Instagram
X(Twitter)
YouTube
note
<ライブ情報>
にぼしいわし 第7回単独ライブ『ウケた?』
これまでいろんな形の単独ライブに挑戦してきたにぼしいわし。
今回は「ウケ」にこだわります。
終わった後にみんなに聞きます「ウケた?」って。
ーーー
「東京公演」
2026年8月7日(金)
開場:19:00
開演:19:30
終演:21:00
会場:杉並公会堂
「大阪公演」
2026年8月11日(火)
開場:19:00
開演;19:30
終演:21:00
会場:新世界ZAZA HOUSE
チケット料金
FC先行:3500円(未発売「ウケた?」ポストカード付き)
一般:3500円
当日:4000円
配信:2000円
(8/7の東京公演の様子を配信)
ーーー
※本記事はamazonアソシエイトリンクを含みます。


、天然石販売・通販-1.jpg)
