杉並区にゆかりのある人々の暮らしやカルチャーに焦点を当てる「ツブサ・スギナミ」。
今回取材したのは、2026年3月に解散を発表した、プロダクション人力舎のお笑いトリオ「トンツカタン」の櫻田佑氏。
それぞれ全く異なる個性をもつ3人の中でも、これまでパーソナルな部分を多く語らず、唯一無二の存在感を放っていた彼だが、その素顔は繊細であたたかい体温を持った生粋のカルチャー愛好家であった。
解散発表直後に敢行した本インタビューでは、14年住み続けている阿佐ヶ谷での暮らしから、古着や音楽などのカルチャーへの偏愛、そして解散を経て見つめる、ポジティブでゆるやかなこれからの生活についてじっくり語ってもらった。
目次
高円寺より“0.8倍速”な阿佐ヶ谷の街を愛する理由

ーー櫻田さんといえば、長年阿佐ヶ谷にお住まいですよね。いつから住んでいるんですか?
櫻田:人力舎の養成所(スクールJCA)の頃からなのでもう14年くらい、だいぶ長いですね。当時は養成所が東高円寺にあって、埼玉の大学を卒業してから養成所に入ったので、そのタイミングで埼玉から阿佐ヶ谷に来ました。そこからずっと、阿佐ヶ谷の中だけで引っ越しを繰り返しています。一回住んじゃうと、住みやすすぎてもう離れられないんですよね。
ーーどんなところが阿佐ヶ谷の魅力なんでしょうか。
櫻田:中野や高円寺ほど「ささくれていない」というか、安らぎがある街だなと。高円寺ってギラギラしてる人が多いし、夢や目的を持った人たち、芸人も多く集まってくる街だけど、阿佐ヶ谷は家族連れや子供、あとは学校もすごく多くて、そこで治安の良さをまず感じますよね。阿佐ヶ谷駅で降りるたびに「帰ってきたな感」があって落ち着くし。高円寺と比べると、時が0.8倍速くらいでゆっくり流れている感じもします。遊ぶなら高円寺や吉祥寺も楽しいけど、住むって考えるとやっぱり阿佐ヶ谷です。
ーーそんな阿佐ヶ谷でお気に入りのお店はありますか?
櫻田:基本は自炊なのであんまり外食しないんですが、先輩や芸人仲間、友達に誘われたらご飯を食べに行ったりしますかね、高円寺芸人だったらそいつどいつの刺身も仲良しだし。
特にラーメンは好きでよく行きます。まずはなんと言っても「麺処一笑」の豚骨ラーメン!あれはとんでもなくうまいです。以前、雑誌のコーナーで紹介したら、1ヶ月後同じコーナーで、近所に住んでる吉本興業のいぬの有馬さんも「麺処一笑」を紹介してて(笑)
みんなめちゃめちゃ大好きなんでしょうね。
あとは「えのけんラーメン」の夏季限定の冷やし中華や「らーめん大慶」、荻窪の「RAMEN CiQUE」のトマト塩ラーメンも最高です。ラーメン以外だと「鍋家」っていう中華料理屋が、ランチで行くとおひつでご飯が出てきて、あれは絶対に食いきれないです。けど本当に美味しい。
ひとりだったらカレー屋さんにはよく行くかも、パールセンターにある「シバダイニング」とか。
…あんまり外食しないと言ったけど、わりといろんなお店に行ってますね。
ーー最初はミステリアスな雰囲気を櫻田さんに感じていたんですが、お話しするとすごく人間味がありますよね…!
櫻田:あれ言わなきゃよかったかなとか悩んだりもしますし、家で一人反省会とかもよくしています。「あの時の発言、どう思われたんだろう?」って、相手のことをすごく考えちゃうところはありますかね。
大学では心理学を専攻していたんですが、「自分が見ている真っ白なお皿も、相手からは真っ白に見えていないかもしれない。だからきちんと相手と話して、相手のことを考えるのが大事だ」って授業で言われたことがすごく頭に残っていて。
それに実は高校時代もノリで生徒会長をやっていたし、結構友達も多い方だし、皆さんが思っているイメージと正反対の人間なのかもしれません。
古着やインディーズ音楽から名探偵コナンまで、深すぎる「偏愛カルチャー」
ーー櫻田さんはカルチャーへの造詣が深い一面もあると思うのですが、ご自身から語ることは少なかったですよね。
櫻田:そうですね、頑なに口を閉ざしてきたので(笑)
音楽はめちゃくちゃ好きで、昔は新宿のタワレコが4フロアくらいあった時に、自分が出るお笑いのライブの合間に行ってひたすら試聴したりしていました。そこで気になったインディーズバンドのSNSをフォローして、ライブに行く、みたいな。
今はサブスクも充実しているし、Xでインディーズを紹介しているアカウントなんかをチェックしたり、仲良くなったミュージシャンから音楽を教えてもらったりしてディグっています。各地方ごとに好きなバンドがいるので、幅広く聴いていますね。
ーーご自身で音楽をやられたりは?
櫻田:完全に「聞く専」です。姉がずっとピアノを弾いていた影響で耳が鍛えられたのか、小学生の頃、姉の発表会終わりに「あそこ間違ったでしょ」って指摘したりもしていました。その影響か分かりませんが、ドラクエのオーケストラコンサートなんかも好きでよく行ってます。ドラクエは兄の影響でやり始めて、ゲーム自体もずっと大好きです。
ーー本や漫画についてはいかがですか?
櫻田:本は小説だと薬丸岳さんの作品ばかり読んでます。事件の加害者家族の心理や、その周りの人間模様を描いていて、そういう人間的な部分にすごく惹かれますね。漫画だと「名探偵コナン」がめちゃくちゃ好きで、「名探偵コナン検定1級」も持っています。画像が4枚並んでいて「発売日の古い順に並べなさい」とか、そういうマニアックな問題にも答えて取得しました。

ーーファッションもいつもおしゃれですよね…!
櫻田:服は基本、古着しか着ないです。高円寺にはあんまり行かなくて、吉祥寺によく行くんですが、「クライミー」っていうお店は相場より安くて、服について丁寧に教えてくれるので2ヶ月に1回は通ってます。すみません、杉並のメディアなのに…
杉並だと、去年の11月に南阿佐ヶ谷にオープンしたスポーツ古着専門店「steez」がお気に入りでよく通ってます。今日着ているゲームシャツもそこで買いました。
民家みたいなところの1階と2階でやってて、店主が話し相手が欲しいって言うから、毎週土曜日に配信しているインスタライブにこの前僕も出てみたり(笑)
阿佐ヶ谷の古着屋さんってあんまり多くないんですけど、あの店は阿佐ヶ谷の希望ですね、最高なお店です。
解散発表と、一人になっても続くかもしれない”トンツカタン”

ーー先日トンツカタンの解散が発表されましたが、櫻田さんご自身はどのような気持ちでしょうか?
櫻田:解散に関しては、元々お抹茶(相方)から何度か話が出ていて、今回ちゃんと話し合って出した結論です。僕自身、ビジネスパートナーとして割り切っちゃっていた部分があって、もっとプライベートな付き合いや、人としてきちんと向き合う必要もあったのに、目を瞑ってなあなあにしていたというか、なんとなくでやってしまっていたところもあるのかなと感じています。
ーー解散発表後の周囲の反響はどうでしたか?
櫻田:解散は割と前に決まっていたんですが、いざ発表すると皆さんすごく連絡をくれて、「とりあえず飯行こう」って言ってもらえて本当にうれしかったです。たくさん優しくしてくれるので、これまで溜まった心の汚れがどんどん落とされていく感覚があって(笑)
今はビー玉みたいにまん丸で、キラッキラな心になっている感じがしています。
ーー櫻田さんの今後の活動についてはどのように考えていますか?
櫻田:賞レースで絶対に勝つ!みたいな情熱は元々あまりなくて、そもそも審査されるのが苦手なんです。でも、ネタをやるのもライブも大好きなので、お笑いはゆるく続けたいですかね。またこれからコンビやトリオを組むというよりかは、1回限りのお試しで色んな人とネタをやったり、人手が足りない時にエキストラのような形で参加させてもらったり、そういうゆるやかな関わり方ができたらいいなと。
ーーカルチャーへの偏愛を活かしたお仕事も増えそうですね。
櫻田:趣味を仕事に繋げたい思いはたしかに強いです。麻雀も好きなんですが、元乃木坂46の中田花奈さんがオーナーの麻雀カフェ「chun.」の立ち上げから1年ちょっとバイトさせてもらったこともありますし、音楽のサーキットイベントで仲の良いレーベルの社長から「芸人をブッキングしてくれないか」と頼まれることもありました。最初は趣味からのスタートでも、その情熱をこれから仕事として形にしていけたらいいですね。古着屋さんなんかも一度は経験してみたいです。
ーーこれからの櫻田さんの活動も楽しみにしています!解散発表の際にも話していましたが「トンツカタン」の名前はどうなるのでしょうか?
櫻田:解散後もできれば「トンツカタン」という名前は残して使いたいなと思っています。
ランジャタイの国崎さんに解散の報告をしたとき「13年もやってきたんだから、これからは楽しいことをやればいい。名前もなくさなくていいんじゃない?」って言ってくれたんです。
「名前は残してひとりだけでも、複数人でも、なんなら2期生オーディションなんかしてもめっちゃ面白いじゃん」って。
だから、まだ分からないけど3人それぞれの事情がきちんと落ち着いたら、人力舎のホームページに僕一人だけで「トンツカタン」の宣材写真が載るかもしれないですね(笑)
解散したら全部ゼロになると思っていたんですけど、国崎さんの太陽の太陽みたいな明るさに救われました。気づいたら会社員のおじさんがメンバーにいるかもしれないし、僕一人でずっとやってるかもしれない。トンツカタンも僕自身も、これからどうなるかはまだ分からないですが、とにかくゆるやかに、楽しいことを続けていけたらと思っています。
【トンツカタン 櫻田佑】プロフィール

トンツカタン 櫻田佑
1989年、秋田県出身。プロダクション人力舎所属。
2016年、第7回お笑いハーベスト大賞で優勝。
2019年、第5回マイナビ Laughter Nightチャンピオン大会にてマイナビ賞を受賞。
2026年3月24日、 4月に開催される人力舎若手お笑いライブ「どっきん!」をもって解散することを発表。
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【ライター・写真家 伊藤夏希】プロフィール

伊藤夏希
1998年、宮崎県生まれ、高円寺在住。
武蔵野音楽大学を卒業後、写真家 / 音楽家として、東京・宮崎を拠点に活動する。
2023年に開催した初の写真個展「この街で生きた、あの頃のこと。」を機に、これまでに計7回の写真展を行うほか、“伊藤日記”での名義でカフェやイベントを中心とした演奏活動、音楽配信も行う。
2026年6月、下北現像所にて8回目となる写真展、またZINEの出版も予定。
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