あなたにとって「良い暮らし」とはどのようなものですか?
”高円寺の女王”と物騒なキャッチコピーで呼ばれつつも、
超庶民派ミュージシャンのうじょうりえが
高円寺の目線で「良い暮らし」を伝えていく
高円寺の”庶民派”女王・のうじょうコラム
4月度お送りします(^ν^)
目次
新しい高円寺
一昨年、高架下にある高円寺ストリート2番街が建て替えにより閉店。
この建物自体が1度全て壊され、建て直され、「高円寺マシタ」が新しく出来ました。
高円寺マシタは飲食店7店舗が入ってます。
なくなったケンタッキーも戻ってきました!
きらきらとした新しいお店が街に来て、住民としては楽しみが増えます。
ただあったものがなくなる寂しさと、再開発進んでいくのかな?という不安はずっとあります。
この事については高円寺に住む沢山の人の声が既に上がっていますが
いちストリートミュージシャンとしてこのコラムを任せてもらっているので、わたしの目線からの気持ちを書いていきますね。
音楽好きな人、サブカルチャーが好きな人達と話しながら「下北沢も大分変わっちゃったし、あとは高円寺しか残ってないね」みたいな言葉をちらほら耳にしました。
たまに下北沢に行くけど、確かに見違えた。
すごく綺麗になって新しいスポットとかも出来てたりして、すげー!と思ったけど
わたしが好きで遊びに行っていた下北沢ではなくなっていました。
昨年杉並区長選挙の際、再開発が大きくテーマに上がっていて
下北沢の話も他人事じゃないなと焦ったのを覚えています。
更地になったかつての高円寺ストリート向かいの、京樽さんの前での路上ライブ。
高円寺マシタの骨組みが徐々に出来てきた頃、京樽さんが入っている建物も壊されるという話を聞きました。
もしかしたらとは思っていたものの、実際聞くとショックでした。
正直言うと、ダントツ1番寂しいです。
だって高円寺に引っ越してきてから7年くらい、よく歌わせてもらっていた場所だから。
京樽さんの場所は路上ライブスポットとしてとても人気があって、周り含めお店が閉まる20時頃から歌い始められるんですけど
一時期は18時くらいから場所取りしておかないと他のミュージシャンに取られてしまうくらい、競争率が高かったです。
お店の前が路上ライブに使われていたら汚されるかもしれないし普通は嫌がるはず、ましてチェーン店なのに
高円寺の京樽さんは全くお咎めもなく、むしろ場所取りで待ってると「頑張ってね」「お疲れ様」なんて挨拶をしてくれたり
お店の締めがいつもより遅くまでかかっていたとき、シャッターが閉まるのをこちらが勝手に待っているだけなのに「遅くなっちゃってごめんね!」と声を掛けてくれて
何でこんなに優しくしてくれるんだろうって。
友達のミュージシャンは廃棄のお寿司もらった事もあるって言ってました。笑
そんな瞬間に出会う度、今日も頑張ろうって元気になれました。
京樽さんはわたしが歌い始めるずっと前からストリートミュージシャンを見守ってくれていました。
先輩のミュージシャンが秩序を守りながら歌ってくれていたお陰もきっとあるんだろうな。
そうして今まで続いてきた奇跡の文化だと思ってます。
「高円寺だから」って理由にするには大雑把すぎて、もっと細かい、深い部分。
人の温もりがある街。
変な街ってよく言われるしわたしもその表現をよくするけど、変な人が多いっていうのだけじゃなく
有り得ないほど思いやりのある人が多いって意味も込めている。
実は心の中で「わたしの住んでる街、いいだろー!」みたいに思ってたりします。
政治家が政策を発案したとき「一般市民の感覚を分かっていない」みたいな批判をよくされているけど、
人の暮らしって実際そこで過ごしてみないと意外と分からないもので、外から見ただけじゃ理解したり再現したりするのきっと難しいんですよね。
わたしも住んでいなかったら「このくらい変えたっていいじゃん」「そんなもんじゃない」くらいに思っていたかもしれない。
ただ千葉の実家の近くが結構変わって綺麗になってたりするのは別に気にならないのに、
高円寺は変わって欲しくない、汚くても今の姿を残していて欲しい、と強く願ってしまうのは何故なんでしょうかね。
馴染んだものを変えたくないって性分は誰にでもあるはず。
どんな高級料理よりも実家のご飯の方が美味しいと思う人もいるし、絶対に綺麗な方が良いのに昔ながらのど汚いライブハウスを好む人もいるし、
懐かしいというか、愛おしいってレベルの感情な気がする。
それに人間である以上、お店の中にいる「人」の様子が伝わってくると、どうしても愛着が湧いてしまうものです。
ライブや曲にしても、わたしは人柄が出ているミュージシャンが好きです。
曲を作った人の生活の背景まで見えるほど感動したときには、共演でもCDを買ってしまう事もあります。
そんな人間らしい部分が、高円寺はお店や街自体に滲み出ているからわたしは愛してやまないんだろうなと思う。
高円寺のこの先どうなっちゃうんだろうと不安な気持ちがある中で、心が温かくなる事もありました。
路上ライブ終わりにしようとしていたときのこと
高円寺マシタの工事の方がわたしの所に来て、てっきり怒られるのかと思ったら
「もうすぐここら辺が工事で通行止めになるんですけど歌っててもらって大丈夫です。最後まで皆さん楽しんで下さい」
と伝えてくれました。
仕事上ただのストリートミュージシャンを気遣う必要もないだろうし、工事が終われば会わなくもなるはずなのに、です。
SNSで見たんですけど、マシタがオープンする前日に路上ライブやられていた方が途中で止められてしまったみたいなんですね
そしたらマシタ新店の高円寺FLATさんがテラスで演奏させてくれたって投稿があって
元々の場所への愛着があるからって、新しい場所に対してマイナスな目で見てしまいがちなの、良くないなと気持ちを改めました。
こういうのお局っていうのか。笑
新しい出会いや街の作り方ができるかもって胸が躍ったのも事実。
高円寺マシタのコンセプト、
高円寺に暮らす人々が紡いできた文化を大切にしながら、『高円寺らしさ』をこれからもつないでいく場所でありたいという思いを込めた、『高円寺の文化のもとに』
だそうです。
そんな出来事あってからこれ見たら、京樽さんの事思い出したり、
あ〜そのままだ〜って。
同じ風景は2度と見られなくても、そこにいた人達の気持ちをつないで
新しい高円寺を見守りながら、わたしも風景の一部になれたらなと思います。
次回は、5月3日(水)更新予定です。
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ライタープロフィール
のうじょうりえ
千葉県出身、高円寺発。
キャッチコピーは人間大好きシンガーソングライター。
「高円寺の女王」の異名も持つ。
コロナ禍現在も東京を中心に月10本前後のライブに加え、路上ライブ、配信、遠征ライブなど精力的に活動。
音楽で生計を立てている。
高円寺を愛し盛り上げたいという思いと、高円寺駅を土日祝日も快速が停まる街にしたい、という秘かな野望がある。
地元千葉への愛も忘れず、台風15号の際チャリティー路上ライブを行い、集まった¥83,890を千葉県へ全額寄付している。
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