のうじょうりえ「日々の余白・杉並 6(思い出させてくれる場所)」

文章:のうじょうりえ
高円寺

5/10、高円寺のまちの駅で開催された、純情ホシヨルフェスに出演してきた。
テシゴトカフェ 星ノ夜ノボートの店主、柿沼あやこさんが主催。(Xのリンク

ライブあり、フードやドリンクあり、わたしが出演の日はマッサージ、占いもありの盛り沢山なイベント。

昨年も出演させて頂いたのだが、まず最初に「高円寺にもまちの駅があるのか、、!」と思った。
しっかりある。


純情商店街のアーチがある通りの一本横の道沿い。
純情商店街とされる範囲ってアーチがある通りだけかと思っていたんだけど、まちの駅も純情商店街と名前がついている。
どこからどこまでかと気になって調べたら、加盟店に座・高円寺まで入っていて意外と広いんだなと思った。
加盟店の場所までが商店街の範囲という認識で合っているのだろうか?
無知で申し訳ないけど間違っていたら教えて下さい。

ホシヨルフェスを通して強く感じたのが、高円寺の温もり。
わたしが高円寺にいたときも離れた今も変わらず感じる。
この感覚は今の所他では感じられるものではなくて、来る度に驚かされるし、胸がぎゅっとなる。

異論があっていいけど、わたしは高円寺を寂しい街だと思っている。
寂しいから誰かといたくて、誰かといたいから優しくありたい。
こんなに当たり前なことがどうして難しくて中々できないんだろう。
けど当たり前で難しいことを無意識にやっている人が多いな、高円寺は。
哲学的な名言って意外と簡単な短い言葉で言い得ているものが多いけど、それと似てシンプルな生き様に気付かされることが多々ある。
シンプルになるのは数々の困難を乗り越えてきたから、というのもあるだろうけど。
最早この街は哲学に近いのではとすら思う。

高円寺にいると時間がゆっくり感じる。
忙しくない。
時計がたまに止まったり動いたりしているような、不思議な感覚になる。
かといって成長しないままという訳ではない。前に進んでいる。
「進み方はそれぞれあるから自分のペースで良いんだよ」と言われているような気もしてくる。
だから時間がゆっくりに感じるのかな。

そうこうしている内にいつの間にか人と人が支え合っていて、何にも代え難い「温もり」が作られているんじゃないかな。
なんて美しいんだろうと思った。
この美しさを知れたのは、わたしの人生において長い目で見てもかけがえのない財産だろうな。
ホシヨルフェスが終わって打ち上げしながら皆さんとゆっくり話して「ああ、ここにいる人達ってこうだったな」と肌で感じた。
暑すぎず決して冷たくない、心地よい体温と同じくらいの。
わたしの高円寺の街への感覚は、やっぱりそんなにズレていないかもしれない。

ちょっと名残惜しくなってしまった。
終電まで少し時間があるから小杉湯に行った。
小杉湯のミルク風呂の入浴剤、引っ越し前に買っておいて贅沢しようって日は使ってる。
直で嗅いだことないから知らなかったけど、ミルク風呂の入浴剤ってクッキーみたいな甘くてすごく美味しそうな匂いがするんだよね。
何かの匂いに似てるなって思ったんだけど、以前金曜日限定で小杉湯で販売していた、山村乳業の濃厚牛乳の香りに近いとわたしの鼻が判断(今も山村乳業の商品は金曜日だけの販売なのだろうか)
ミルク風呂だからそりゃそうかだけど、普通の牛乳じゃなくて明らかに濃厚な方。
湯船に溶かすと甘すぎない優しい香りになる。肌が超しっとりするし是非買ってみて欲しい。
小杉湯のミルク風呂をひとりじめにできる優越感にも浸れる。

家のお風呂も気を使わずゆっくりできて好きだけど、銭湯って何でか考えがまとまったり浮かんだりするから不思議。
出た後に「大丈夫」って思えることが多い。
ミルク風呂の説明が載ったフライヤーに「自分を許せなかった日も」と書いてあるのが印象的で、ミルク風呂に入るとき、わたしは自分のことを許せているかなあとよく考える。

帰りながら、やっぱり名残惜しくないやって思った。
こんなに温かい気持ちなんだから何が違うなって。
そうか、高円寺はわたしにとって大事なものを置いていく場所じゃなくて、大事なものを思い出させてくれる場所なんだ。
ずっとそこにいなくても、わたしの中にきっともう根付いてる。だから大丈夫だ。
そんな場所がこれからもどんどん増えていったら良いな。

高円寺ヴィレッジヴァンガードインストアライブ

6/18に「君を助けない」という8曲入りのアルバムを全国リリースする。
→TOWER RECORDSのページ


発売日の6/18、ヴィレッジヴァンガード高円寺店でインストアライブをやれることになった。
音楽人生の中で一つの夢だった。
ヴィレッジヴァンガード、昔から好きだったな。
何が好きと言われると難しいけど、何か好き。
出掛けた先にあると何故か寄ってしまう。
ミュージシャンとして我ながらどうかと思うが、正直CDショップよりヴィレッジヴァンガードに行くことの方が多かった。
自分が音楽をやるようになってからは、ヴィレヴァンに知り合いのミュージシャンのCDの棚が作られていたり、ミュージックビデオが流れていたりするのを見掛ける度、羨ましかった。
わたしもいつかって気持ちと、わたしには無理だろうなって気持ちが混じりながらその棚を通り過ぎてた。
本当は悔しかった。

数年前にわたしのCDを高円寺のヴィレッジヴァンガードで販売してもらったことがある。
そのときはプレイヤーでCDを流しながら、1階の本コーナーの端に置いてくれていた。
棚はもちろんなくて小さくだけど、すごく嬉しかった。
それだけわたしにとって「ヴィレッジヴァンガードに自分のCDがある」というのは大きなことだった。


一時期は本当にインストアライブできるかどうか分からなかったんだけど、何とかできることになった。
夢が叶った訳だけど、夢って叶って終わりじゃないなって思う。
「君を助けない」には、去年の6月頃から今年3月までに作った曲を入れた。

丁度去年6月頃から、「自分らしさ」「自分にとっての音楽」を深く突き詰めようと改めて考え始めた。
自分らしさを見付けていくには、自分の気持ちを大切にすること。
自分の気持ちを大切にするには、人の意見に流されないようにすること。
人の意見に流されないようにするには、自分のことを大切に思ってくれる人を思い出すこと。
自分の気持ちを抑えて合わせてしまうのが良いんだと思っていたけど、そうすることで悲しむ人もいると知れたから。
できそうでできなかった目の前のことを意識していったら、大切にしたいものが見えてきた。
わたしがわたしでいようとすることにも意味があるのかもしれない、と思えるようになった。

今も自分らしさとか、何で生きているのかとか、何で音楽を作っているのかとか、はっきり分からない。
でも理由が分からない人は他にも沢山いるだろうから、わたしが考え続けるのにも意味があるのかもしれないとも思う。
自分と向き合って、例え答えの出ないことでも、途中だとしても、音楽という形にするのは少なくとも無駄ではないんじゃないかと。
そしてわたしは皆にも「無駄じゃない」って言える人になりたい。
曲を通してわたしの気持ちを聞いて欲しいんじゃない。
聴いている人が自分自身の為に音楽を聴いて、自分のことを考えてもらえたらなとだけ願ってる。

高円寺ヴィレッジヴァンガードでのインストアライブ、良ければ来てもらえたら。
ライブ観覧は無料。
最近高円寺の路上ライブも全然やっていないので、路上感覚で来て欲しいなって気持ちがある。
路上ライブは街の風景の一つになれている感じが好きな所だったから。


のうじょうりえ「君を助けない」リリース記念インストアライブ

■日時:2025年6月18日(水) 19:20~
■開催場所: ヴィレッジヴァンガード高円寺店 2Fイベントスペース
■内容:アコースティックライブ+特典サイン会
■対象店舗:ヴィレッジヴァンガード高円寺

※アコースティックライブは観覧無料 / CDご購入でサイン会参加特典券
ヴィレッジヴァンガード高円寺にて、対象商品をご購入頂いた方へ、先着順で、上記イベント特典券を差し上げます。(当日のみ有効)
特典券をお持ちの方のみ、特典会(サイン会)へご参加が可能です。
また、イベントスペースへの優先入場のご案内をさせて頂きます。

■対象商品
のうじょうりえ「君を助けない」 対象:下記2作品
<初回限定盤 / CD + エッセイ「君を助けない」(文庫本) >
8songs / CD+文庫本 YSPC-0008 5,280円(税込)
<通常盤 >
8songs / YSPC-0009 3,080円(税込)

上記、対象商品は、お電話でのご予約が可能です。
ヴィレッジヴァンガード高円寺店
電話:0353055536
営業時間:11:00~23:00 (年中無休)


ライタープロフィール

のうじょうりえ

千葉県出身のシンガーソングライター、エッセイスト。
日々の悲しみや弱さや喜びの心象風景を「生きること」に視点を置いた文学的歌詞と言葉と共に、圧倒的なリアリティを持った美しい歌声とアコースティックサウンドで、自分自身と向き合う為の音楽を発表。年間でワンマンライブやサーキットフェスを含む200本近いライブ活動を行なう。
エッセイストとしても活動し、2022年より「ツブサ・スギナミ」にてコラムを連載中。

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