こんにちは。山城です。
東京都杉並区阿佐ヶ谷で『天文図舘』というお店を3年前からしております。
2階建ての小さな喫茶店です。
生まれも育ちも杉並区荻窪。
しかしながらお店を作る前はヒッチハイクで日本を1周したり、鹿児島県の離島に移住したり、とにかく杉並区から逃げ回っておりました。
そんな僕が最近は杉並区の36町を全て歩いて回るという非生産的な活動を無事終了。
区内の神社と学校も併せて全部回ってきました。
しかしながら歩きっぱなしも勿体無いのでツブサで記事にする事と相成りまして。
題して「もし喫茶店店主が杉並区に2店舗目を作るなら…」です。
34.06k㎡という東京都の中では地味に大きな区内のどこなら面白い喫茶店を作れるのか。
今から考察していきたいと思います。
※ちなみに現状2店舗目の計画は1mmもございません。
腑抜けた内容になる事は間違いないため、タメになる記事をお探しの方は本記事をソッ閉じして頂きこちらのURLまで飛んでください。
さて妄想まみれのダメになる記事をお求めの方が残ったところで本題に入っていきましょう。
ちなみに用途地域については調べていないため記述する地域がそもそも飲食店不可の可能性もありますが、そこはご愛嬌でお願いします。
目次
杉並区の全貌
何と言っても場所を選ぶには地域の特性についてしっかりと把握しなければなりません。
それではまず杉並区の地図を見てみましょう。
情報が適度に入っている良い地図なのですが、初めて見る方にはどこに何があるか分かりづらいですね
なので町をレイヤーにして理解していきましょう。
町を形成し、分断するのはいつの時代も交通。
ということで、町を時代順に分割していきます。
まずは川。人間が生きるのに欠かせない杉並の水辺には旧石器時代から集落がありました。
次に街道。人間が物資を運ぶのに街道は欠かせません。江戸時代には宿場町が高井戸にもありました。
ここで鉄道。日本の近代化を進め、杉並区が発展するきっかけとなった中央線などなど。
最後は幹線道路。今まで東西にしか伸びていなかった交通網に戦後初めて南北を繋ぐ環状線が通ります。
これを重ねてみると、こう。
はい、見事にずれていますね。
なにせ渾身の手書きですので。
ということで山城自作の地図は見にくいし醜いので改めて正規の地図を見てみましょう。
レイヤーで考えてみると時代毎に発達した道路や線路が網目状にぶつかりあって今の杉並区が形作られているのが分かります。
すぐには使いませんが頭の片隅にこちらの地図を広げておいていただけると嬉しいです。
作ってみたいお店
それでは次に作ってみたいお店のスタイルです。
僕は以前から「青空ノスタルジー」をテーマにした空間を作ってみたいと思っていました。
天文図舘のイメージがどちらかというと寒い季節の日没をイメージさせるので、暑い季節の日中を連想する空間を作ってみたいなと常々考えております。
ここで必要なのは、「清涼感と開放感」。
遮るものが少ない日の当たる空間が良いなと思っております。
席数は1人で回せるレベルの10席程度が理想。
開放感については鏡を上手く使えば演出可能なのではないかなと思っております。
ちなみにメニュー構成やオペレーション等については何にも考えていません。
強いて言うなら内装以外はごく普通の喫茶店です。
あくまで妄想なので悪しからず。
場所選びの条件
次に喫茶店において大事な場所選びの条件を考えていきます。
僕が重要だと思うのは下記の2点。
- 人が滞留する場所に作る事
- 家賃が安い場所に作る事
とても当たり前の事を言っておりますが、これを探すのがめちゃくちゃ難しい。
天文図舘を作る時も全然テナント物件が見つからず、リスト化した不動産屋に片っ端から電話したのを覚えています。
さらにここに作ってみたいお店のコンセプトに合わせて、下記の3点を基準にしたいと思います。
場所の条件
- 人が滞留する場所
- 家賃が安い場所
- 清涼感と開放感がある場所
「滞留」という言葉をあえて使ったのは、人通りが多くても素通りしてしまうような場所では存続が難しいと思ったためです。
例えば下井草の旧早稲田通りなども道路が大きく人通りもあるのですが、出勤や帰宅で素通りしてしまうため、続いているお店が少ない印象です。
では人が滞留する場所にはどういった種類があるでしょうか。
考えるに現代ではこういった場所に人が滞留すると感じています。
- 駅周辺の商店街
- 大きな交差点
- 映画館&劇場
- 神社・寺
- 水辺
それでは1つずつ検証していきましょう。
検証
駅周辺の商店街
まずは駅周辺の商店街です。
杉並区には合計して5本の路線が東西に流れています。
北から西武新宿線、中央線、丸の内線、井の頭線、京王線ですね。
駅数にすると合計19駅もあるので、いかに町と電車に密接な関係があるかが分かります。
町の規模感はやはり中央線の駅周りが他線に比べてはるかに大きい。
駅の東西南北に大規模な商店街が広がっているのは中央線だけです。
ちなみに荻窪と西荻窪は井荻村時代から長い時間をかけて区画整理事業に取り組んでいました。
そのため町が碁盤の目のように綺麗で、駐車場がある一軒家が多く比較的裕福な家が多い印象です。
それに対して高円寺や阿佐ヶ谷は街作り計画前に人口が急激に増えてしまったため、道や家が狭く雑多な印象を受けます。
僕自身は荻窪より東側のカオスな街並みが好きなのですが、高価格帯のお店をするなら荻窪以西が向いているかもしれません。
ちなみに僕のような社会的信用もお金も無い弱小事業主が中央線駅周りで喫茶店をするなら、大通り商店街の2階や路地裏で隠れ家的なお店にするのが良いと思います。
逆に中央線以外の路線駅は商店街も大きくないので、なるべくなら路面店にしたい。
人通りが少ない町で隠れたら、本当に隠れてしまう気がします。
余談ですが、商業施設の入っている駅ビル内のテナントは審査が僕では100%通らないと思います。
ただどちらにしても駅周り商店街では「開放感や清涼感」がなかなか演出しづらいので候補からは外します。
大きな交差点
次に大きな交差点です。
普段気にしていないと見落としがちな交差点付近。
やはり信号待ちの方の目に入るのでお店が意外と多い印象です。
国分寺にある「胡桃堂喫茶店」や谷中の「カヤバ珈琲」は交差点の脇にあったと記憶しています。
青梅街道と五日市街道の交差点や人見街道と井の頭通りの交差点付近にも飲食店があるのでそういう事なのでしょう。
ただ、結構大手のチェーンが多い印象なので意外と家賃が高いか、空間を売りにしないファストフードが向いているのかもしれません。
あくまで感覚値なのですが、交差点や信号の前には牛丼チェーンのすき家が多い印象です。
ただし清涼感は無い立地なので候補からは外します。
劇場&映画館
喫茶店との相性が抜群なのが映画館や劇場等の大衆娯楽施設ですね。
言わずもがなですが、一応理由を挙げると以下の点でしょうか。
- 開演までの時間潰しに利用出来る。
- 終演後の小休憩に利用出来る。
- 文化的なモノへのハードルが低いため、客層が近似している。
劇場では高円寺に区営の座・高円寺。阿佐ヶ谷にも小劇場が多々あり中央線文化の象徴と言えます。
しかしながら区内の映画館の多くは閉館しており、現在は阿佐ヶ谷にしか残ってないのではないでしょうか。
ちなみに天文図舘は阿佐ヶ谷駅から映画館までの通り道に位置しており、少なからず恩恵を受けています。
ただ大衆娯楽施設も基本的には駅の近くに存在しており、結論としては駅近商店街と同じです。
神社・寺
次に神社・寺です。
これは結構意外だと思った方も居るのではないでしょうか。
しかしながら、神社・寺は江戸以前から現代まで続く町の大きな集客装置になっています。
最近でも御朱印集めが根強い人気を誇っており、阿佐ヶ谷の神明宮でも積極的にアピールしている印象です。
ちなみに阿佐ヶ谷駅から神明宮までの通り道にある「gion」や、高円寺駅から氷川神社までの通り道にある「ぽえむ MANO A MANO COFFEE」などはいつも繁盛されており、羨望の眼差しを向けております。
ただ、そもそもお店自体がとても素敵なので神社が関係しているかは疑問なのですが…。
他にも杉並区には東京三大鳥居の1つがある馬橋稲荷神社や、神社の中でも最高格である井草八幡宮や大宮八幡宮があります。
また、古典落語の舞台にもなっている堀ノ内妙法寺や今川義元で有名な今川氏が祀られている観泉寺も参拝者を驚嘆させる荘厳さがあります。
しかしながら上記の神社・寺は駅から少し離れているのもあるせいか、施設単体での集客力が極端に強いわけでは無いという印象です。
人が集まる場ではありますが出店場所としては不十分かもしれません。
水辺
最後に水辺です。
ここも神社・寺と同様に意外と思われる方も多いのではないでしょうか。
しかし僕らの日常を思い出して頂きたいのですが、散歩や運動をする際は川沿いで行なう事が多々あると思います。
また、池の畔でデートや買い物の休憩をした経験もあるのではないでしょうか。
テイクアウト需要もあるはずなので幅広い客層が期待出来るはず。
中央線・井の頭線ユーザーにとって馴染みのある井の頭公園を想像すると分かり易いかもしれません。
実はそのような場所が杉並区にも2つあります。
1つが西荻窪駅の北部にある善福寺池近辺。
1つが西永福駅の北部にある和田堀地域です。
どちらも最寄駅から徒歩で30分程ですが、杉並区の風致地域に指定されており武蔵野台地の自然が保全されています。
戦後に宅地化が急激に進んだ杉並区の中でもとりわけ異彩を放っている地域です。
善福寺池には昔からボートなどのアミューズも充実しており、カメラや絵画をされる方も非常に多い印象。
雰囲気としては申し分なく近年では「nido」というカフェがオープンして少し話題になりました。
全席テラス席で新宿御苑の横にある「カフェ・ラ・ボエム」を彷彿とさせるスタイルはペット可なので散歩休憩にも適しており、平日昼でもお客さんが絶えません。
立地としての実績は十分ですが、「nido」の2番手となる事と高級住宅街なので家賃が高くなる可能性があり、今回は候補から外したいと思います。
最後に和田堀地域です。
杉並区出身なら聞き覚えのある地域名ですが、区外の人にはほとんど認知されていないのではないでしょうか。
しかしながら緑地が非常に多く、公園や運動場、郷土博物館があるので人も少なくはありません。
西永福駅から少し遠いのですが、最大の利点は大宮八幡宮が傍にある事です。
神社の集客力に水辺の集客力が加われば、店舗として成り立つ可能性が十分にあります。
また、駅から離れているのでテナント代も低い可能性が高く清涼感も申し分ありません。
表参道入口に駄菓子屋がありますが、それ以外に目立った喫茶店は無さそうです。
総合的に見ると集客に少し不安が残りますが、店のコンセプトにもマッチしており1番の穴場だと考えています。
最後に
では最後にお店の想像をして頂きましょう。
まずは場所。赤線で囲まれた地域です。
ズームしてよく見てください。良い立地ですよね。
次にお店のイメージ。
焦げ茶と青を基調とした空間には青色のステンドグラスが飾られており、どこか南国のような、どこか教会のような懐かしい空間です。
誰もが小学生の夏休みに戻れるような時間を提供したいと思っています。
そして窓から見える風景はこんな感じ。
水量豊かな善福寺川とどこまでも青々とした木々。
そしてそして最も大事なのは日光。
はい、何という事でしょう。
こちらの写真では全くもって良さが伝わりません。
この地域を周っている日だけ天気が悪かったのは日頃の行いのせいでしょうか。
大宮八幡の境内はこんな感じ。
鎌倉時代から続く古刹中の古刹。
しかし曇り空で全くもって栄えません。
近くにある郷土資料館の中には古民家もあり、囲炉裏に火入れもしてくれます。
しかし曇り空。写真の手抜き感も否めません。
記事のオチになるのならもっとちゃんと撮っておけば良かった。
という事で締まりが悪い内容となってしまいました2店舗目計画。
こちらの店名は「喫茶 曇天図舘」でいかがでしょうか。
おあとがよろしいようで。
ライター・プロフィール
山城隆輝
喫茶店店主。
1994年生まれ、荻窪出身。
100年続くお店を作ることを目指しています。
Twitter
https://twitter.com/nostalgiakenkyu