インタビュー連載企画「食to人」 vol2. 大黒健嗣(高円寺・まちの相談屋)前編

大黒健嗣・食to人(前編) 【インタビュー・対談】

前回よりはじまりました、連載企画「食to人(しょくとひと)」

初回は、高円寺小杉湯の番頭兼イラストレーター・塩谷歩波さんにインタビューさせて頂きました。

今回はvol2です。

「食to人」は、「人」にスポットを当て、主に食に関する内容をゲストにインタビューしてゆきます。

食を通して人を知る。
食を切り口に、親しみやすく、相手を理解してゆく事がテーマです。
タイトルの「食to人」は、「食と人」「食から人へ」や「食通(人)」などが掛かっています。

今回第二回目のゲストは、高円寺で「まちの相談屋」をされている、大黒健嗣(だいこくけんじ)さんです。

彼の特異な生活実験を通じたライフスタイルは、まさしく「ミスター高円寺」を体現している方だなぁとさえ思います。

大黒さんといえば、高円寺で「AMPcafe」「BnAhotel」を立ち上げられ、高円寺の巨大壁画プロジェクトを企画運営、ネット開催の「高円寺パラレル祭」を企画・出演、「高円寺ハイパー井戸端ラジオ」では高円寺の様々な主要人物にインタビューされるなど、幅広い分野で活躍されています。

今回も前編・後編に分けて、まず前編では「大黒さんとはいったいどういう人物なのか」を深堀りした後、後編では「食に関してのインタビュー」をしてゆきます。

それでは前編をどうぞ。

インタビュー(前編)

大黒さんを知ったきっかけ「高円寺パラレル祭」について

シゲタ ツヨシ
本日はインタビュー受けて頂き、ありがとうございます。 よろしくお願いいたします。
大黒 健嗣
よろしくお願いします。
シゲタ ツヨシ
私が大黒さんのことを初めて知ったのは、2020年5月にネットで開催された「高円寺パラレル祭」です。
YOUTUBEで10時間生放送されたのを、ずっと家で興奮して観てました。
世の中が大変になってしまった緊急事態時に、高円寺の主要メンバー(小杉湯、コクテイル堂・抱瓶、studio DOM、HOT WIRE GROUP….等の代表者ら)を短期間で呼び集めて、大黒さんが順番に現状をインタビューしていくトークステージは、高円寺住民として凄く見ごたえがありました。
見終わった後沸いてきた感情は、素直に「悔しい!」でした。
大黒 健嗣
ありがとうございます。
シゲタ ツヨシ
私は普段、グルメ情報をSNSやブログで発信していますが、全然それだけで終わろうと思っていなくて。
今回のインタビューもそうですが、食を通じて人を紹介したり、街の魅力発信に繋がる、先のことがしたいと思って普段活動しています。
そう思っていた矢先、大黒さんのパラレル祭で私がやりたかったことを、先に全部形にされてしまって。
それくらい私にとって衝撃的なイベントでした。
なので今後も1年に1回とかでもいいので、定期的に続けてほしいなぁと思ってます。
大黒 健嗣
ありがとうございます。
私もやりたいと思ってますが、前回とはやり方を変えようとは思ってます。
今後目指す方向としては「フェス」というより、「仮想空間の街づくり」だと思ってるんです。
高円寺という現実の街が、仮想化するところのルールさえ決めて「誰でも」「手軽に」「スピーディーに」発信できる仕組みにしてゆきたいんですよね。
オンラインでできる強みを、もっと活かしたいです。
シゲタ ツヨシ
ほー!そうなんですね。

今の高円寺における役割

大黒 健嗣
高円寺における私の役割っていうのは2つあると思っていて。
大半は「水面下で動くこと」で、後は「いざという時にカンフル剤になること」だと思ってます。
皆が大変な時にバッ!とエネルギーを出すことは得意で、あの1回目のパラレル祭はまさに緊急事態だったので、そのタイミングでした。
3週間前にアナウンスして、人にブッキングで動き始めたのが1週間前くらい、WEBページ作りはじめたのが3日前ですね。
シゲタ ツヨシ
そんなスピード感だったんですね!もの凄い。
大黒 健嗣
ゾーンに入ってましたし、今まで超えてきた山場があった経験から、それ以上でなければできると思ったので、そんなに怖くはなかったですね。
シゲタ ツヨシ
緊急事態時に、バッと立ち上がった人が高円寺で数名居ましたよね。
そういう人を把握できたのは、個人的に凄く大きかったです。
その中で特に印象が大きかったのが、私にとって大黒さんなんです。
大黒 健嗣
そういうタイプの人って居ますよね。
少し世の中の情勢が落ち着いた6月くらいからは、コツコツとお店を続けてやっていく人の「話し相手」になることが、私のやることだと思って活動してます。
フェーズで動いてますね。
シゲタ ツヨシ
なるほどですね。
大黒 健嗣
普段は水面下で動いてます。
あくまで高円寺がより面白い街に進化することを目的に考えると、 自分の名前のクレジットが入ることより、「良いと思うこと」が色んな人の手によって、より多く実現していくことが重要だと思います。
それに高円寺は住んでる人も個性が強烈な人が多いから、一緒にやる人に光が当たるように考えますね。
最近わかってきたのは、むしろその方が私が動きやすいです。
シゲタ ツヨシ
えー、すごいですね。
なんというか、、慈悲深い?というか。
大黒 健嗣
んー、これは戦略的な所もあって。
やっぱり達成したいことがあった時に、そちらの方が効率が良いんですよ。
個性がどうしてもバッティングしちゃうので。

高円寺を良くしたいと思わせるもの

シゲタ ツヨシ
大黒さんがそんなに「街を良くしたい」と思わせるものは何なんですか?
大黒 健嗣
私は私で、制作意欲が溢れてくるんです。
「もの」より「こと」を作ることがしたくて。
BnAホテルを作った時も、「もの」より「こと」の面を中心に考えてましたし。
30歳を越えて社会に生きてる意識があり、社会において何が必要であるかは、震災や疫病などの危機感と共に自然に考えるようになりましたね。
関わる人が増えていく中で、できることの幅を広げていきたいと思ってます。
その中で、高円寺という街くらいのサイズが、丁度チャレンジングで良いなぁと思ってるんですよ。
これが「東京都」とかになると、雲をつかむようなものになりますから。
もの作りの様な感覚で、人と一緒に何かをやりたいと思っています。
シゲタ ツヨシ
政治家になりたいとかはあるんですか?
大黒 健嗣
全くないですね。
手触りの範囲でできる、ぎりぎりクリエイティブな範囲で叶えられる所で、プロジェクトの幅を広げていっている感じなんです。
高円寺に住んでるし、リアリティのある範囲が高円寺という街なんです。

肩書き・セルフプロデュースについて

シゲタ ツヨシ
私は色んな活動をされている大黒さんが魅力的だと思うんですが、一方、他の人にとって大黒さんが「何をやっている人なのかわからない」と思われることも多いのではないかと思うのですが、その点についてはいかがですか?
大黒 健嗣
肩書きを自分で考え続けるのは、ライフワークみたいなものだと思ってます。
言葉がしっくりこないなぁと思ったらコロコロ変えてもいいと思ってるんです。
これは、自由に活動している人達の、必ず抱える問題だと思います。
皆、自分の定義は難しいと思っているけど、人の事はわりとカテゴリで判断しようとするんですよね。
出身地、性別、年齢、仕事先、国籍など。
それはもちろん、私もします。
他の人に、自分の複雑性に理解を求めても「そらわからないわ」と思っています。
理想は、顔と名前と見た目で、「なんとなくあの人はこういう人だよね」と思ってもらえるのが究極だと思いますね。
皆がカテゴリに興味があるこそ、そこを作っていくことも重要なセルフプロデュースの一環だと思います。

「まちの相談屋」という仕事

シゲタ ツヨシ
大黒さんの肩書きの「まちの相談屋」というのは、「コンサルタント」ではないんですか?
大黒 健嗣
相談屋なので、「何でもいいです、やります」って感じですね。
シゲタ ツヨシ
それはお金をもらうこともあるし、もらわないこともある様な感じですか?
大黒 健嗣
いえ、相談屋として相談もらってる時は、一切お金をもらってないですね。
シゲタ ツヨシ
では生計は、他で立てられているんですか?
大黒 健嗣
ざっくりいうと、どこからももらってません。
シゲタ ツヨシ
そうなんですか!
大黒 健嗣
じっさい私が高円寺で仕事をして収入を得るということは、今年2020年の2月から0にしましたね。
世間が大変な時期に突入してから。
シゲタ ツヨシ
生活費を稼ぐことは、具体的にどうされてるんですか?
大黒 健嗣
皆「自分がやりたいこと」と「生活費を稼ぐこと」を天秤にかけて、やりたいことを明確にしていくじゃないですか。
すると純粋な「やりたいこと」の範囲が、お金を稼ぐことでだいぶ範囲が狭められると思うんですよ。
私はお金がなくなるまで「やりたいことを追求してみよう」と思ったんです。
それは世の中でも、ほとんどの人がやっていないから。
全然お金を持ってないのに、お金を稼ぐことを辞めてみると、“本当にやりたいこと”と、”そうでもないこと”が自分の中でハッキリするだろうなぁと思ったんです。

自分を使った生活実験

シゲタ ツヨシ
えー、すごい。
自分を使って、試しているような感じですね。
大黒 健嗣
そうそう、これは自分を使った「生活実験」なんです。
プロジェクトの一つです。
僕は、誰もやったことがないことをやるからこそ実験の意味があると思う性格なんです。
そんな感じなんですよ。
シゲタ ツヨシ
それは「だいたい、ここらへんまでかな?」みたいな、時期的な目途はあったりするんですか?
大黒 健嗣
まず、お金がスッカラカンにならないと、見えてこないと思ってるんです。
ある内は見えない。
ただお金がなくなるだけではなくて、「give & take」をお金じゃない「物」で成立させることを主に取り組んでいます。
相手の「余っているリソース」をもらうって感じですかね。
飲食店だったら食べ物だし、不動産関係だったら住居だし。
基本的には衣食住ってことになるんですけど。
そうやって、生活はできるよねっていう所まではいきたいと思ってます。
シゲタ ツヨシ
ほー!なるほど。
大黒 健嗣
次のフェーズとしては、自分が成立したら、皆も成立するかだと思います。
ただ、皆で物々交換しあうっていうのは、あまり見えていなくて。
だから考えているのは「与えるだけ」。
「与えるだけ」の人がたくさん増えていくと全体がうまく循環して、意外と生きていけるんじゃないか、という漠然とした希望があります。
それは誰かが初めないと、そのムーブメントって起きないと思ってます。
シゲタ ツヨシ
大黒さんがそういう考えに至った、経験やロールモデルなどはあるんですか?
大黒 健嗣
昨年アメリカの砂漠で行われた「バーニングマン」に行ってきて、そういうことを肌で 感じましたね。
「give & take」ではなく「give & give」で、一週間7万人の暮らしを成立させようという実験的なフェスティバルで。
そこで強烈な体験をしました。
そこで経た実感は、今の社会構造そのままにフィットはしないけど、理想的な感覚だなとは思ったんです。
シゲタ ツヨシ
へー、そこから得た経験が今の高円寺での活動に繋がっているんですね。
大黒 健嗣
なので、今行ってる生活実験は、「プロジェクトデザイン」というより「プレイヤー」としての視点でいますね。
もっとそういう仕組みを作れる得意な人が現れるでしょ、と思ってます。
貨幣経済もそろそろシフトするんじゃないかと思ってるんです。
人類史のたかだか100年くらいの話じゃないですか。
テクノロジーがここまで変わってきていて、問題も出てるんだから、そろそろ変わらざるをえないなぁと思うんですよね。

お金について

シゲタ ツヨシ
ちなみに、お金は嫌いですか?
大黒 健嗣
いえ、好きか嫌いかでいうと、好きです。
便利でダイナミックですから。
ただ、貯めることが好きなのではありません。
それと、今持ってる財力で、やりたいことが制限されることが嫌なんですよね。
お金がないとできないことも現代社会だとめちゃくちゃありますし。
シゲタ ツヨシ
逆に荒稼ぎしてやろう!となったりするかもしれないですね。
大黒 健嗣
ありえなくはないですね。
一気にひっくり返ることが。
私は仮説で動いているので、仮説や目的が変われば、そっちに振り切ることもあるかもしれません。
なので、「信念」とはまた別なんですよ、これは。
シゲタ ツヨシ
あくまで自分を使った、実験なんですね。
自分をフィールドに投げ込んでいる感覚というか。
なので、先がわからないというのは、凄くしっくりきます。
大黒 健嗣
そうですね。
この実験するには、今のところ自分しか巻き込めないじゃないですか。
まだ人は巻き込めないですよね
見えてれば巻き込めるでしょうけど。
逆をいえば、自分が楽しければ今はいいんですね。

人との出会い方、人脈形成について

シゲタ ツヨシ
大黒さんの作るネットメディア「パラレル祭」や「ハイパー井戸端ラジオ」などを拝見していると、高円寺に関わる人やゲストがすごく多いと思うんですけど、そういう人間関係はどうやって築いているんですか?
大黒 健嗣
ほとんど最初は飲み仲間から広がっていくんですよね。
今は「大黒さん、この人と会った方がいいですよ」って言われ、そこに行って挨拶をする感じですね。
いいなと思ったら個人的に連絡を一通でもいいから取り合うっていうのを、広げていく感じかなぁ。
シゲタ ツヨシ
なるほどですね。
大黒 健嗣
人との感度が近くなると、頻繁になぜか街で顔を合わせるようになりますね。
行動の場所が似てくるんですよ。
私とシゲタさんもそうだと思います。
一回知り合いになると「あ、またここで会った」ってなりますよね。
これは街の面白さだと思いますよ。
シゲタ ツヨシ
街中で良くお会いしますもんねw
少しチープな言い方になってしまいますが「人脈」について伺わせてください。
人脈を欲しいと思ってる人が多いと思うんですけど、そういう方にアドバイスできることはありますか?
大黒 健嗣
私が何かを達成した訳じゃないんで、私の考え方ってところになるんですけど。
「自分が楽しい状態でいること」だと思います。
そうすると、他人にも楽しい状態を共有できると思うので。
あの人と居るといつも楽しい、ワクワクする!って思う人が人脈を広げていくんだと思いますね。
逆にそれ以外の広げ方はわからないし、やったこともないです。
シゲタ ツヨシ
自分がワクワクしている状態を見てもらう、ってことですか?
大黒 健嗣
自分がワクワクしている状態じゃないと、人の事をワクワクさせることはできないですね。
一番大事なのは、面白い!って自分自身が本当に感じてる状態でいることだと思います。
そして人と会った時に意識してるのは「俺はこんなに面白いやつなんだよ!」っていうプレゼンテーションじゃなくて、自分が感じてる楽しさを相手にも同じように感じ取ってもらうこと。
これが人付き合いの鉄則だと思いますね。
シゲタ ツヨシ
確かに、人脈作り以前の話でもありますね。
大黒 健嗣
楽しくない話をしてる人と、一緒に居たくないじゃないですか。
案外そうじゃないことって多いですからね。
飲みの席とかって、「こういうことやったら面白いよね」って話をしているかと思いきや、「こういうことやりたいけど、こういうことは違うと思うし、あの上司最悪だよな!」っていうケースが多いです。
やりたい話をしている様でいて、やれない・やりたくない原因の話を問題視していることは非常に多いですよね。
それは政治の話でも同じだと思います。
シゲタ ツヨシ
人との交友を広げる際に、お酒ってどうしても必要ですか?
大黒 健嗣
私が20代の時は必要だったんですよ。
やり方がわからないから。
めちゃくちゃ飲みましたね。
人付き合いは、数が多ければ多いほど、余裕ができるじゃないですか。
年齢や慣れなど、ある程度お互いの殻を砕く為には、良いツールだとは思います。
でも最近は、お酒を呑まなくてもいいですね。
相手が酔っぱらっちゃうと、話の本質からずれちゃうことが多いので。
相手によりますけど、最近は飲まないこともありますし、昼に会うことも多いですね。
シゲタ ツヨシ
なるほど、ありがとうございました。
大黒さんの人柄や思想などを、少しは皆さんに知って頂けたのではないかなぁと感じます。
では、話をガラッと変えて後編では、「食に関して」質問をさせてください。
大黒 健嗣
はい、お願いします。

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続きのインタビューは、後編に続きます。
後編は「食に関して」インタビューしてゆきます。↓

後編も是非お楽しみください!

※インタビュー・構成・ライティング・写真撮影(プロフィール写真除く) / シゲタ ツヨシ

プロフィール

大黒健嗣・プロフィール

大黒健嗣(Kenji Daikoku)
高円寺・まちの相談屋

1983年生。2008年、高円寺AMPcafeを立ち上げ現在まで運営。2016年、アートホテルプロジェクト「BnAhotel」を共同代表として立ち上げ、企画・アートディレクションなどを担当。
宇宙PORT、都市型MURALなど公共空間でのアートプロジェクトの企画運営やコンサルタント活動、また自らの生活実験を通して、未来的価値観やライフスタイルを提案し実践している。