【高円寺、芸人たち #2】好きであるのに理由なんてない。高円寺はいつまでも青春で、ずっと面白い。【そいつどいつ 市川刺身】

高円寺

ツブサをご覧のみなさんおはようございます、文筆家・ピアニスト・写真家の伊藤夏希です。

高円寺に関わる芸人にフィーチャーし、その人の生き方や高円寺での暮らしにまつわるエピソードを深掘りしていく「高円寺、芸人たち」。

今回紹介するのは、2021年「キングオブコント2021」で決勝に進出した、吉本興業所属のお笑いコンビ「そいつどいつ」の市川刺身さんです。
今回は高円寺を深く愛する刺身さんに、高円寺の魅力や、高円寺芸人によるYouTube「高円寺チャンネル」の再開のことなどを深掘りしていきます!

【高円寺、芸人たち・そいつどいつ 市川刺身】人を好きになるのに理由なんてないのと一緒

NSCに入るタイミングで高円寺に住み始めたから、高円寺での生活は今年で13年目です。

高校生の頃、現場バイトでお世話になった先輩がラップしていたり絵を描いたり、いろんなカルチャーに詳しかったりとにかく多彩で、そんな先輩がよく来ていたのが高円寺でした。

バイトが終わるとよく一緒に高円寺まで服を買いに来たりしてて、実際にその先輩が高円寺に住みはじめてからも、僕が現場バイト終わるたびに高円寺まで行って、先輩からごはんをご馳走になったり。そんなこともあって、昔から高円寺のことはなんとなく好きでした。

よく「高円寺のどこが好きですか?」と聞かれることがあるんですが、人を好きになるのに理由なんてないのと一緒で、高円寺を好きであるのに明確な理由は特にないんですよね。

どこが好きかはよくわからないけど、高円寺に対して悪いと思うところが一切なかった。だから今でも好きなんだと思います。

いろんな街で駅を出たところ直ぐがすごく重要だと思ってて、 雰囲気とか暖かさというか。例えば五反田とか都心部の駅って、すごく広すぎる気がして。
明大前とかもきちんとした商店街があるわけではないけど、ずっと道が広がってるような。 

でも高円寺は街全体がぎゅっと詰まった感じがして、帰ってきたときに寂しさを感じない。 

お店もたくさんあるし、ある程度街が明るいから、ライブ終わりに高円寺に帰ってくるとなんかほっとしますよね。知ってる人が駅にいなくても、なんか寂しくないというか。

【高円寺、芸人たち・そいつどいつ 市川刺身】刺身流・高円寺の歩き方

高円寺の街を散歩するのが好きです。仕事が終わって高円寺まで帰ってきて、でもまだ家に帰りたくないって時は、南口のパル商店街を過ぎてルック商店街を歩いたりしてます。

銀杏BOYZの「骨」という曲のPVで商店街をずっと歩くのがあるんですけど、あの雰囲気を感じつつ、ちょっと道の脇に出て、コインランドリーで休憩してみたり。


で、また歩き出して、調子がいい時は北側まで行ってあずま通りから早稲田通りまでずっと歩いて、それから馬橋公園まで行ってベンチに座ったり、喫煙所でタバコを吸ったり、あとは馬橋公園近くにある夜中も営業してる古着屋を外からチラッと覗いてみたり。

でもお店には入らない。入ったらなんか買わなきゃいけないかなとか思っちゃうから(笑)

でも最近は仕事終わり夜が遅すぎて、あんまり散歩とか居酒屋に行けてないです。
その代わり仕事へ行く前に高円寺で昼飯を食べてから行くんですけど、それがすごく楽しみで。

最近行ったところだと「食堂でべこ。」がすごく美味しかったです。 おばんざいのランチがうますぎて、、ほんとにうまい。丸くて小さな器に入った麻婆豆腐がぐつぐつしながらやってくるんですけど、大きな豆腐を自分で崩して食べるのが最高ですね。
麻婆豆腐って大きな器でやってきたら、ずっと麻婆で食べていかなきゃいけないじゃないですか。 
でも実は麻婆豆腐って小鉢くらいのサイズがちょうどいいんですよね。たくさんある小鉢の中のひとつくらいがちょうどいい。 

それでいうと、マカロニサラダもそんなにたくさんはいらないですよね。
マカロニ10本くらいでちょうどいいっていうか、そんなサイズ感を叶えてくれているので、食堂でべこは全てがちょうど良くて、本当に。 

あとは「とりかつ たるたる 金いろ」もよくいきますね。
でもあそこに行くといつもお腹いっぱいでその日1日終わっちゃう、、
だってご飯お代わりできちゃうから、タルタルあったらそりゃごはんお代わりしちゃいますよね。

【高円寺、芸人たち・そいつどいつ 市川刺身】スマホの待ち受けは高円寺芸人

僕も出たキングオブコント2021の決勝で空気階段さんが優勝して、それから打ち上げ配信があって、全て終わったのが2時過ぎくらいでしょうか。

どこか飲みにでもいく流れになったんですが、その当時僕たち含めて高円寺芸人が4組決勝(空気階段、マヂカルラブリー、ニューヨーク、そいつどいつ)まで進出していたのもあって、マヂラブの村上さんが「じゃあこの後、バーンイサーンの裏にあるなんか座りやすそうなへり集合で」って提案して(笑)

マヂラブさんはその当時M-1で優勝していたし、ニューヨークさんも売れてて、空気階段さんも優勝して、みんな売れっ子になっていってるのにお店に入らなかったですからね。

お店には入らずバーンイサーンの裏で飲んでたんです。

適当にコンビニでお酒買って、ポケットにナッツ入れて、それをみんなでシェアして、みたいな。

売れてようが売れてなかろうが何も変わらない。そんな感じでした。そのときの感覚のまま3年経って今に至るけど、みんな今でも何も変わってないです。今でもスマホの待ち受けはその時の写真ですね。

【高円寺、芸人たち・そいつどいつ 市川刺身】コロナ禍で生まれた“高円寺”での活動

YouTube「高円寺チャンネル」:高円寺チャンネル始めます!!

ちょうどコロナ禍のときにYouTubeで「高円寺チャンネル」がスタートしました。
あの当時、みんなコロナでライブがなくて暇で、ネタをやる場所ももちろんなかったし。 

あとは、高円寺に住んでいる人から声をかけられてフードデリバリーの配信をしたり、フリーペーパーのSHOW-OFFにでたりもしましたね。

そうやってYouTubeだけでなく、この街で自分達ができることをして、高円寺全体が盛り上がればなと思って、いろんなことをやってました。

「高円寺チャンネル観てます」って言われることも多くて、街の人とのつながりみたいなのも感じられて本当によかった。  

でも、3年前くらいに高円寺チャンネルの更新が完全に止まっちゃいました。いろんな制約で撮影が厳しくなっちゃって、、
例えばお店で撮影するときは完全に貸し切らなきゃいけないとか、アクリル板を持ってこなきゃいけないだとか。 

じゃあテイクアウトだけでYouTubeをやろうかとも考えたけど、コロナが明けてくるにつれてみんなも忙しくなってきたし、ちょっと更新が止まっちゃいましたね。

YouTube「高円寺チャンネル」:【無人古着UNDER900】お久しぶりの高円寺チャンネルで勇気なくても入れるお店

だけどせっかく投稿続けていたし、このメンバーの中だと僕が1番時間あるなとも思って、何より僕はずっと「高円寺チャンネル再開したい!」と考えていたので、ひとまずメインは僕で、最近動画投稿を再開しました。

電車で高円寺に帰ってきたときに、車椅子のおじちゃんが「いつも動画で見てるよ」って言ってくれたのがうれしくて。僕の親みたいな年齢の方も楽しみにしてくれてるのを感じて、それならまたやらなきゃと思ったんですよね。

高円寺チャンネルが自分たちのモンスターコンテンツになっていけばいいな、と思っています。

【高円寺、芸人たち・そいつどいつ 市川刺身】この街はいつまでも青春で、ずっと面白い

今年の2024年で芸歴12年目になるんですけど、高円寺で吉本の若手の子とかが、女の子と「ウェーイ」って歩いてるの見ると、「いやいや高円寺芸人はそうじゃねぇだろ」って思うんです。「俺の時はそんな高円寺じゃなかったぞ」って(笑)

僕が高円寺で空気階段のもぐらさんと初めてごはんに行ったとき、ポケットから小銭を全部出して「奢りたいけどこれしかねえから」ってくれたのが、72円。

そのあと立ち飲み屋の「千吉良屋」に行って、もぐらさんが1000円札を2枚指に挟みながらテーブルに置いてあるメニュー表をじーっと眺めて、「お好み焼きは4分の1サイズにカットで、そしたらこの値段になるから、、、じゃあこれ以外でなんか食べたいのある?」って聞いてきたり。

あとは鬼越トマホークの坂井さんとは、みんなで飲んだあとの帰り道、ちょうど交差点の分かれるところで「これから色々不安なことあるよな」みたいな話をふたりでして、気付けば2時間も交差点で喋っていたり。

女の子とワイワイなんてしてこなかったし、なんかほんとにダサいかもしれないけど、でもこの感じは高円寺ならではだと思ってて、まだまだ青春を感じています。

こんなにずっと好きでいられる街だから、僕は喫煙者なのでいつか高円寺でタバコが吸える喫茶店を開業したいですね。 

目黒や恵比寿とかに住むよりも、高円寺にいる方がハングリーな気持ちでいられる。

それくらい高円寺はいつまでも青春で、ずっと面白いです。


【高円寺、芸人たち・そいつどいつ 市川刺身】プロフィール

そいつどいつ 市川刺身

東京NSC18期生。吉本興業所属。
2015年に相方である松本竹馬とお笑いコンビ「そいつどいつ」を結成。
2019年「第40回ABCお笑いグランプリ」決勝進出。
2021年「キングオブコント2021」ファイナリスト。

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公式 そいつどいつチャンネル
高円寺チャンネル

ライタープロフィール


伊藤夏希 

1998年生まれ。宮崎県出身、高円寺在住。
武蔵野音楽大学を卒業後、文筆家・写真家・ピアニストとして、東京・宮崎を拠点に活動中。
陽と陰をテーマに、人間らしいやわらかな世界観を表現している。

2024年4月14日 ピアノ&チェロデュオコンサート「夜明けには忘れるゴーストタウン」
2024年6月1日〜30日 伊藤 夏希×ビーンズ阿佐ヶ谷 写真展「Apoptosis」
2024年9月15日〜30日 伊藤 夏希 写真展「さざ波、呼吸」
2024年10月5日 ピアノトリオコンサート 開催予定

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