電車でポテチ
電車に乗っていたら、斜め向かいに座っている人がポテトチップスを食べていた。
わたしにとってはポテトチップスって、ゲームをしながらとか、今日はだらだらするぞ!と怠惰に身を落とすときに食べる物だ。
まだ気が抜けない電車内で食べるより、家に帰ってからの方が美味しいのにもったいない、、!
なんてその人を見ながら思ってしまった。
そういえば昔は、帰り道であろう電車や外でお酒を飲んでいる人も、疑問に思ってたな。
家に帰ってからじゃダメなのだろうか、と。
それも今となっては、わたしの知見が狭かったと反省しているのだけど。
高円寺で暮らし始め、お酒と肩を並べて生活するようになってから、外で飲酒する楽しさと美味しさを思い知ることになった。
家に帰ってから飲めばいいのにと思っていた人と、同じ道を辿る自分。
やってみて分かった「帰り道に飲むからいい」のだと。
帰り道に飲む理由は人によって違うだろうけど、わたしは1人で飲み会を行っているような、2次会をしているような、開放的な感覚が好きだった。
今日も1日頑張ったと、自分を褒めてあげる瞬間。
家に帰ってから味わえばいいものを、わざわざ帰り道にフライングでお酒を飲む変なシチュエーションに、特別を感じるのだ。
今では帰りながらお酒を飲んでいる人を見掛けると「うんうん分かるよ、美味いよね」と心で頷く。
そんなことを思い返すと、電車でポテチを食べてるあの人のことも、否定すべきではない。
今は理解できなくても、いつか分かるときが来るかもしれない。
いやわたしはもう既に、ありかもしれないと思い始めている。
理解できないのは、理解しようとしていないからだ。
経験していない、知らないことを否定してしまうだけ。
よし、今度帰り道にポテトチップスを買ってみよう。
きっと良さが分かる。
でも食べづらそうだし、まずはじゃがりこから始めようかな。
怪我の巧妙
2月は1年で最も寒い月。
暦の上で1月20日が大寒とされ、まさかの2月4日頃から立春とされるらしい。
そう言われましても、、、となる。
春のお便りは音沙汰ない。
暦と実際の季節感とのあまりのギャップに、子供の頃は文句を垂れていたが、これでも暦にもまあ色々とあるのだろうと大目に見るようにはなった。
ちなみに立春は、地球が太陽の周りを一周する時間に少しずれがある為、年によって日付が動くらしい。
そして立春の前日が節分と決まっているので、節分の日も一緒にずれるらしい。知らなかった。
2月8日(日)にライブがあり、高円寺に行った。
なんとその日は雪予報。
「1センチほど積もるでしょう。」とテレビの天気予報が言っていた。
東京の電車が雪に大層弱いことは、身を持って知っている。
電車は動いているのか、辿り着けるのか、気を揉んでいた。
高円寺に行くなら現地でご飯を食べたいし、雪で電車が止まったり遅れているかもしれない。
その日は特に早く、家を出た。
いつもギリギリなわたしにとっては上出来だ。
そして心配とは裏腹に、電車は5分遅れほどで、ほぼ定刻通りに動いていた。
総武線は本数も多いので、多少遅れても安心だ。
これなら目指していた高円寺ご飯もいけるぞ。
嬉々として高円寺の改札を出る。
余裕を持った行動をできたことも相まり、肩で風を切るように街を闊歩。
食べたかったタブチへ向かう。
カツカレーが食べたい。
、、定休日だ。
わたしとしたことが、今日が日曜日ということを忘れていた。
高円寺にいたときは、自分がよく行くお店の定休日は大体把握していたのに。
わたしも落ちぶれたものである。
お店の奥から聞こえるタブチのお母さんの声だけ聞いて、次のプランを考える。
以前は味楽がダメならタブチ、タブチがダメなら味楽だったが、味楽が閉店した今はもう叶わない。
タブチのある高架下を出て目と鼻の先にある味楽を、開店しているか席が開いているか確認する工程もない。
遠回りできない寂しさを感じつつも、美味しい思いをさせてもらったことを思い出し、寂しさを振り切る。
そしてわたしが向かったのは、悩んだらここ。
安定の「バーンイサーン」だ。
タイ料理屋バーンイサーン。
一時期は週4で食べに来ていた。
安いから通いやすいのと、1度食べると何故かまた明日も来たくなる。
16種類くらい?あるランチメニューも制覇した経験あり。
平日限定で日替わりランチメニューもあり、かなり種類があるが、それもまあまあ食べたと思う。
プチ情報として、金曜の日替わりランチだけ「鶏のレッドカレー炒め」で固定なのは教えてもらった。
ランチでバーンイサーンに来ると、大半は「ガイパッポン」か「ガイガパオラーカオ」の2択で悩む。
ガパオというと日本人も想像しやすいが、ガイパッポンは名前だけではどんなものか分からない。
バーンイサーンは分かりやすく日本語訳を()で横に書いてくれている親切メニュー。
ガイパッポン(鶏のふんわりカレー炒め)
ガイガパオラーカオ(そぼろ掛け目玉焼きのせご飯)
と表記されている。
この日はガイパッポンを選んだ。
ガイパッポンはわたしの食べた感想だと、そんなにカレーという感じはしなくて、タイ風親子丼というイメージ。
鶏肉はぷりぷり、野菜はゴロゴロ。
苦手な人は注意してほしいのが、セロリが主役級の顔をして入っている所だ。
タイ料理はみょうがとかセロリとか、癖のある香味野菜が思わぬ所でメインで使われていることが多い気がする。
わたしは大好きだけどね。
むしろガイパッポンのまろやかさに、爽やかなセロリがアクセントになってとても美味しいのだ。
残念ながら、写真はない。
バーンイサーンはあまりにも来過ぎていた為、いつからか食べ物の写真を撮る癖が抜けてしまったのだ。
フォルダがタイ料理だらけになるからね。
バーンイサーンで食事中、とんでもないことに気が付いてしまった。
ライブの入り時間を1時間早く勘違いしていたのだ。
そんなに早く行っても、多分会場はまだ開いていない。
もう食事も終わってしまう。
だがギターなど機材もあるのでそんなに機動力はない。
近くのカフェでも行こうかと考えていた所、ずっと行きたかったお店があったのを思い出した。
MOSTA SWEETS(モンスタスイーツ)だ。

癖のあるタイ料理なども好きだし、対して全ての食材は塩で食べるのが最も美味いとも思っているし、かと思えば派手な見た目や味の食べ物も大好きだ。
MOSTA SWEETSはオープン前から、何やらわたしが好きそうなお店ができるぞと楽しみにしていた。
同じように周りもざわついていた。
最初にMOSTA SWEETSを口にしたのは、確かPorta Coffee Standでやっていたポップアップだった。
パル商店街のど真ん中にあるPorta Coffee Standには、前を通る度コーヒーの誘惑を受ける。
よく店頭で色んなポップアップをやられているのだが、MOSTA SWEETSのお菓子が並べられていた日、反射的に足を止めてしまった。
見た目がもうどストライクだったのだ。
カラフルな色に大きなクッキー。
買ってすぐ食べた。
クッキーと呼んで良いのか分からないほどボリュームがあって、甘いだけじゃなく塩っ気もある。
味のパンチを食らい得られる多幸感。
さすが本場アメリカンスイーツのお店。
わたしはこういうお菓子が食べたかった!
オープンしてからもよく通っていたが、高円寺を離れてからはあまり来られていなかった。
種類が沢山ありどれも魅力的なので、久々のMOSTA SWEETSは、どれを頼むか悩んでしまう。
こういうときは直感か、最初に食べたかった物を選ぶのが良い。
すみませんが、この日頼んだ写真のクッキーの名前は忘れてしまった、、
バレンタイン限定メニューだったと思う。
もちろん抜群の相性のコーヒーも頼む。
豆の種類を聞かれまた悩んでいたら、「酸味が好きならこれ、あまりならこれがオススメです」とアシストしてくれた。
わたしはどこでも酸味のないコーヒーでとオーダーすることが多いので、まるで心を読まれたようで感動した。
スタッフさんも優しい。
少しあるイートインスペースが丁度空いていた。
ギターで邪魔してしまうのが申し訳ないので、混んできたらすぐ出ようの気持ちで恐る恐る座る。
しかし居心地が良く、なんだかんだゆっくりしてしまった。
荷物の多いわたしにも嫌な顔せず接していただき、感謝しかない。
やっぱり大好きなお店だなと、大満足でお店を後にした。
持ち帰りできるし、高円寺土産になるべく毎回でも寄りたい。

ライブが終わり帰り道、駅に向かっていると広場の周りの花壇に目が行き、一瞬あり得ない考えが過った。
ツツジがもう咲いてる、、?
そんなはずがない、ツツジが咲くのは暖かくなる4月頃だ。
頭では分かっているのに、そう思った正体は、葉の上に積もった雪だった。
春にこの花壇にツツジが咲く光景を、毎年見てきた。
目に焼きついていた記憶も、季節外れのツツジをわたしに咲かせた。
馬鹿だなあと思いつつも、なんだか「明日も前を向いていこう」という気持ちになった。
今日が雪が積もるくらい寒い日でも、春は必ず来るのだ。


のうじょうコラム vol.3より(2022/5/4)
ライタープロフィール

のうじょうりえ
千葉県出身のシンガーソングライター、エッセイスト。
日々の悲しみや弱さや喜びの心象風景を「生きること」に視点を置いた文学的歌詞と言葉と共に、圧倒的なリアリティを持った美しい歌声とアコースティックサウンドで、自分自身と向き合う為の音楽を発表。年間でワンマンライブやサーキットフェスを含む200本近いライブ活動を行なう。
エッセイストとしても活動し、2022年より「ツブサ・スギナミ」にてコラムを連載中。
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